40歳妻が「くも膜下出血」になった
医療機器メーカー勤務Cさん(55歳)

脳卒中で亡くなった父の死をきっかけに
医療機器メーカーに就職

 大学に入学した年に父親を脳卒中で亡くしたCさんは、私立大学の工学部を卒業後、新卒で医療機器メーカーに入った。普段からしびれや頭痛を訴えていた父親を強引にでも病院に連れて行かなかったことを後悔した。父親のように、若くして病気で亡くなる人を少しでも減らすためには、診断するための検査機器が必要だと確信して、就職活動のときに迷わず医療機器メーカーを選んだ。

 Cさんの会社は中堅だが、高い技術力で医師や検査技師の信頼が厚かった。Cさんも新入社員ながら、自社の製品で病気の早期発見ができるようになったという医師の感謝の言葉を社内報で見て誇らしかった。自分と自分の会社が日本の医療を変えているという実感があった。

 Cさんが40歳になった春に、課長昇進して工場勤務から本社勤務になった。長年作業着で過ごしていたCさんにとって、都会でスーツを着た生活に慣れるまで時間を要した。

 本社では納品先の医療機器のメンテナンスを担当した。病院に行くたびに、そこで働く医師や技師が、寝る間も惜しんで働いている姿にいつも感動した。だからCさんも休日や夜中に呼び出されてもすぐ駆けつけた。医療機器はどんな状況でも正確に作動しなければいけない。それがCさんのプライドでもあった。部下より早く会社に来て、遅くまで残業する。休日出勤もいとわない。独身だったCさんは、会社の近くに住み働いた。それが当たり前だったので、漠然と「生涯独身だろうな」と思っていた。

女性部下から呼びだされ、衝撃の告白
15歳年下妻との結婚へ

 課長になってはじめてのバレンタインの前夜、部下の女性から2人きりで話したいと言われた。話がしたいと言われたとき、すぐに思い浮かべるのは結婚退社だ。仕事のできる子だったので、理由はどうあれ、まずは引き留めようと心に決めて、自分の指定した待ち合わせの店に向った。

「ここは会社の人間がほとんど来ないから、何でも話してみて」と、Cさんはテーブル越しに声をかけた。部下の女子社員は緊張しながらも、まっすぐ前をみて話した。