震災で黒字転換した製紙会社

 トイレットペーパーを製造販売している鶴見製紙株式会社(埼玉県)は、かつて借入金が40億円以上ありました。

 金利の支払いだけで年間1億円近く。
 里和永一社長は金利を払いたくないので、借金を返済すると言い出した。

 私は里和社長の弱みをいろいろ握っているので、「絶対にダメだ」と強引に借入れを続けさせました。

 その直後に起きたのが、2011年3月の東日本大震災です。

 震災後の電気・ガス料金の値上げにより、利益率の低いトイレットペーパーはつくればつくるほど赤字に。出荷量が2桁で伸びましたが、同時に赤字も2桁で膨らみました。

 しかし、鶴見製紙は倒産しなかった。
 赤字でもキャッシュがあったからです。
 赤字を垂れ流していれば、いつかキャッシュが尽きて倒産します。

 しかし、2014年の消費税率引上げで事態が好転しました。
 里和社長は税率が変わったタイミングでトイレットペーパーを1円以上値上げした。年間5億ロールつくっているので、単純計算すると1円の値上げで経常利益が5億円増える。これで黒字転換です。

 震災から消費税率引上げまでの3年間、里和社長は毎年1億円の金利を払い続けました

 金利負担は決して軽くありませんが、それをケチって長期借入金を全額返済していたら、会社は間違いなくつぶれていました。