一向に進まない高齢者の雇用促進策

 厚生労働省は2013年度から、定年退職者の中で65歳までの就労を希望する従業員全員の雇用を企業に義務づける方針を明らかにした。年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、高齢者の無年金・無収入化を防ぐ狙いがあると見られている。

 厚生労働省の調査(今年6月)によると、過去1年の定年到達者約43.5万人のうち、継続雇用を希望した人は全体の75.4%、継続雇用を希望しない人が24.6%となっており、4人のうち3人が引き続き働きたいという意向を示している。これに対して、現実はどうなっているのか。希望通り65歳まで継続して働ける定年退職者は今年の6月の同じ調査によると、全体で47.9%にとどまり、とりわけ大企業だけでみるとその半分の23.8%の人しか継続雇用されていないという実態が浮かび上がる。

 政府は年金支給開始年齢の引き上げを見越して、すでに2006年に高齢者雇用安定法を改正し、

①定年年齢の引き上げ
②継続雇用制度の導入
③定年制廃止

 の何れかを採用するよう企業に義務づけた。ところが、多くの企業は定年延長や定年制廃止を選択せず、8割強の企業が継続雇用制度を導入した。この制度は、労使の合意があれば再雇用者の選別を行えるところがミソであり、定年で一度退職させ、働く意欲や健康などいくつかの基準を設けて企業側が自由に従業員を選別できる仕組みとなっている。そのため、希望者の半数程度しか現実には働けないのだ。そこで業を煮やした政府が再び乗り出してきたという訳である。