>>(上)より続く

 夫は難癖をつけてきました。智子さんは着の身着のまま逃げ帰ってきたので、心当たりはありません。夫には過去に離婚歴があり、元妻と離婚するときにこうした濡れ衣をかぶせた上で「それなら持ち出した金と慰謝料は相殺な!」とDVの慰謝料を払わずに丸め込んだのか、当時の成功体験をもとに「今回も大丈夫」だと侮っている節がありました。

 このような横領のでっち上げが本当に通用するのでしょうか?例えば、預金口座なら出金した覚えがないのに残高が減っていた場合、取引履歴書や残高証明書などを第三者である金融機関が発行してくれます。しかし、金庫の中身は現金なので増減を客観的に証明することは難しく、百歩譲って別居直前のタイミングで現金が減っていたとしても、犯人が智子さんだと証明するのは難しいでしょう。実際のところ、金庫のある部屋に防犯カメラは設置されておらず、誰がいつ金庫を開けたのかは不明です。

 一方のDVには証拠があります。夫が智子さんに手を上げて怪我をさせたのは計4回。そのうち2回は病院へ行き、診察を受け、そして診断書を発行してもらったそうです。第三者である医師が記入した診断書が智子さんの手元にあります。

 また、家出のきっかけになった暴行事件の当日、夫の罵声の録音、破壊された家財等の写真なども揃っています。夫個人が何の証拠もなく口先だけで言っている胡散臭い話と、音声や写真が添付された証拠にもとづく智子さんの真実味のある話。どちらの信憑性が高いのかは明らかです。財産の持ち出しを証明できず、嘘を見抜かれて恥ずかしい思いをした手前、今さら「戻ってきてほしい」と頭を下げることは難しく、夫は離婚を受け入れざるを得なかったのです。

「跡取り」欲しさに
長男の親権を譲らぬ夫

 このように第一の目標である「離婚」は実現できる運びになったので、次は親権です。暴力癖、虚言癖、そして脅迫癖がある夫に、息子さんを任せるわけにはいきません。そのため、智子さんは当然のように「2人とも私がこのまま引き取って育てていきたい」と望みました。

 夫は自分が犯した悪行の数々を棚に上げて「うちの業界じゃ寺の後継ぎがいないと非常に肩身の狭い思いをすることくらい、お前だって分かっているだろ!蒼空(長男)の親権は譲らないぞ!!1人ずつ分けるなら文句ないだろ!?」と、代々続いてきた寺の世襲を第一に考えて、長男の親権を渡すよう脅してきたのです。