明年の国際関係はどう動くか?
世界情勢はかつてなく流動的

 明年の国際関係はどう動くのであろうか。世界が大きく変動しているだけでなく、明年は多くの国で大統領選挙や指導者の交替が予想されているだけに、情勢は流動的であり、なかなか予測が難しい。

 国際関係の地殻変動―米・EU・日本という西側先進民主主義国の相対的国力の低下と中国を筆頭とする新興国の台頭により、G7が中心であった時代のような求心力は働かず、グローバルな課題についての国際的な意思決定はますます難しくなっている。

 先般のCOP17の合意はあるが、今後ポスト京都の枠組みの具体的内容を盛り込む作業は至難を極めるのだろう。WTOのラウンドも、新興国との差異はあまりに大きく、進展していくことはなかろう。

 先進国の財政危機は益々深刻となる。従来、米国はドルが基軸通貨であること、EUは弱い国の債務問題を強い国を含むユーロという共通通貨により包み隠してきたこと、日本は公的債務の大部分を国内貯蓄により賄ってきたことにより、危機を顕在化させてこなかった。

 しかし、いったん膨張した政府支出を切り込むのは至難の業であり、どの国においても従来とは異なる思い切った措置をとらない限り、危機は回避できない。これは、ポピュリズム化した民主主義国の政治の中では簡単ではなかろう。

 米国の場合は、国防予算の大幅削減や増税を含む思い切った措置が大統領選挙の年に実行できるか、EUでは分裂を招くことがなく欧州中銀を最後の貸し手として危機を乗り越え、さらなる財政の規律を各国に課しうるか、日本においては歳出削減と増税をさらなる内政の混乱を招くことなく決定しうるか、といったことにかかる。各地域が思い切った措置を取れなければ、世界経済全体の混乱につながっていくことが危惧される。

 また、米国はイラク戦争の終結を宣言し、本年内に完全な撤兵が行なわれるほか、アフガニスタンからの撤兵も今後進められていく。オバマ大統領の下で、米国が一方的に武力を行使するということは概念しづらくなり、多国間主義へ傾斜していくだろうし(それ自体は歓迎すべきであるが)、国防予算の削減と併せ、米国の武力行使の蓋然性は低くなる。これが米国の重石がなくなり、秩序が乱れていくといったことに繋がらないよう、国際社会の一層の連携が重要となる。