今年8月、長期経営計画で、非自動車事業への果敢な投資を打ち出した豊田通商。6月に就任した加留部淳新社長の下、“トヨタの先兵”から一人前の総合商社として自立できるのか──。

「豊田通商は眼中にない。トヨタ自動車の一部門という認識だ。利益で劣る双日のほうが、依然として怖い──」

 豊田通商について語るとき、他の総合商社の幹部は、一様にそう本音をのぞかせる。

 どの商社を大手総合商社としてとらえるか? その線引きは現在、明確ではない。各マスコミやアナリストも、三菱商事から丸紅までの5社、そこに双日を含めた6社、そして、豊田通商まで含めた7社とくくりがバラバラなのだ。

 その理由は、豊田通商という企業が、どこまで“自立”した総合商社なのか、判断が分かれている点に尽きる。

 一方、当の豊田通商社員には昨今、「5大総合商社というくくりはともかく、6大は解せない。実態はすでに7大なのに……」というもどかしさが広がっている。

 その最大の根拠が図①だ。業界5位の丸紅にこそ大きく水をあけられているものの、豊田通商の純利益は双日を上回る。しかも、筆頭株主(21.57%。3月現在)、トヨタ自動車に支えられた十八番の自動車事業の純利益を除いても、双日にほぼ肩を並べているのだ(図②)。

 今年8月、豊田通商は、新たな長期経営計画で、非自動車事業を拡大させ、2015年度に現在7対3の自動車と非自動車の純利益比率を5対5にし、純利益1000億円の大台に乗せる目標を掲げた。20年度には非自動車の純利益を、自動車の2倍にまで高める方針だ。

 この方針は数字にも表れている。図③を参照してほしい。トーメンと合併した直後の06年度は、非自動車への投資額は、全体のわずか11%の70億円程度だ。ところが、09年度には、非自動車への投資額が自動車を逆転。10年度は575億円と、全体の74%を占めた。計画では、11~12年度の2年間も、計2500億円の投資計画のうち、7割を超える1900億円を非自動車につぎ込む予定だ。

「自動車は当社の核であり続けるが、それ以上に、第2、第3の柱として他の事業を伸ばし、名実共に総合商社への脱皮を図る」と、同社幹部の鼻息は荒い。

 だが、それでも他の総合商社の反応は「確かに成功したらすごいけどね」(ある総合商社の幹部)と冷ややかだ。