中小企業の後継者難、「廃業より売ったほうがマシ」でM&A増加中

業績が伸びているのに「廃業の危機」

 上場企業の中で、平均年収ランキングのトップ10に4社がランキングしている業種がある。M&A(merger and acquisition:合併と買収)仲介会社だ。ちなみに、ランキングトップはGCAで平均年収は2139万円(2016年12月期、平均年齢37.2歳)、以下2位M&Aキャピタルパートナーズ1905万円(16年9月期、31.1歳)、4位ストライク1616万円(16年8月期、343.9歳)、8位が日本M&Aセンター1418万円(17年3月期、34.7歳)となっている。もっとも、GCAは売り手と買い手の双方から手数料を得る仲介業務は行わず、10ヵ国に15拠点を展開して、対象も大企業、グローバル案件をターゲットとしている点で中小企業のM&A仲介をメインとしている3社とは一線を画している。

 しかし、GCAを除いても、トップ10に中小企業のM&A仲介会社が3社もランクインすることなど、一昔前なら考えることさえできなかったことである。逆に言えば、それだけ中小企業のM&Aニーズが高まってきている証左といえるだろう。

 中小企業庁が16年11月にまとめた「事業承継に関する現状と課題」によると、2020年頃には数十万の団塊経営者が引退時期にさしかかるとされている。

 また、直近10年を見ると法人経営者の「親族内承継」の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった「親族外承継」が6割超に達している一方で、60歳以上の経営者のうち50%超が「廃業」を予定、特に個人事業者の約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」とアンケートに回答しているという。

 問題は、廃業予定企業のうち3割の経営者が同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性についても4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答している点だ。

 こうした、企業業績が必ずしも悪くない企業であっても後継者が決まっていない、または廃業予定である企業が数十万社に上ると予想されており、事業承継を選択しない場合には当該企業が維持している雇用や技術、ノウハウが失われてしまう可能性が高いからだ。