ネットフリックスの問題は、「ヒット番組が多すぎて、新番組の打ち切りが少なすぎること」。こう表明したのは、他ならぬ同社CEOのリード・ヘイスティングスである。実験、失敗、学習の重要性を説く名経営者らの言葉を紹介する。


 もっと多くの間違いを犯そう、もっと多くの失敗を歓迎しよう――。

 成功しているビジネスリーダーの間で、みずからの会社と従業員にこう訴える人が、にわかに増えている。なぜだろうか。

 2017年5月、コカ・コーラの新CEOとなったジェームズ・クインシーは就任直後、幹部以外のマネジャーに対して呼びかけた。1985年の「ニュー・コーク」の大失敗以降、何年も自社に付きまとってきた「失敗への不安」を乗り越えよう、と。「間違いを犯していないとしたら、それは懸命さが足りないからです」

 6月には、登録者数で空前の成功を享受しているネットフリックスのCEOリード・ヘイスティングスが、次のような懸念を表明している。同社のドル箱のストリーミング配信サービスは、ヒット番組が多すぎて、新番組の打ち切りが少なすぎるというのだ。

「いま我々の番組のヒット率は高すぎます」と、技術系カンファレンスの場で彼は言った。「もっとリスクを取って(略)もっととんでもないことを試す必要がある(略)。全体の打ち切り率はもっと高くあるべきです」

 アマゾンのCEOジェフ・ベゾスは、世界で最も成功した起業家と言ってよいだろう。そのベゾスですら、自社の成長とイノベーションは失敗の上に築かれていると、非常に率直な言葉で主張している。

 彼は、アマゾンがホールフーズを買収した直後に、こう説明した。「大胆な賭けに出るとは、すなわち実験をやるということです。それが実験である限り、成功するかどうかは事前にはわかりません。実験には本質的に、失敗がつきものです。ですが少数の大きな成功が、何十もの失敗を埋め合わせてくれます」

 これらのCEOからのメッセージは、理解するのはたやすいが、ほとんどの人にとって実行に移すのは困難だ。私が会うビジネスリーダーや訪問する組織のうち、イノベーションと創造性を重視しているという相手は数知れない。ところが、その同じリーダーと組織の非常に多くが、間違いやつまずきや失望を恐れている。それが理由で、彼らはイノベーションと創造性が乏しいのだ。

 失敗する覚悟がなければ、学ぶ準備はできていない。そして、人や組織は、世界の変化と同じ速さで学び続ける努力をしない限り、成長と進化を続けることはできない。

 では、「正しく間違える」方法とはどのようなものだろうか。組織と個人が、小さな失敗を大きな成功に結びつけられるようにするためのテクニックはあるのだろうか。