報告書では、このPBR1倍割れの会社が日本企業では38%存在するのに対し、欧州は15%、米国では5%に過ぎないことが指摘されている。これは「日本企業が生み出す価値に対する投資家からの期待が極めて低いことを示している」(伊藤レポート2.0)だけに、PBRに数値基準を設けることが議論された、というわけだ。

 だが、計算上の分子となる株価は企業業績のほか、日本経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)や需給など様々な要因で決定され、目標とはなりづらい。このため、最終的に具体的な数値を示すには至らなかったという。

そもそも低ROEの状況も
「伊藤レポート」から変わらず

 加えて、「2.0」の報告書で皮肉めいているのは、そもそも14年の「伊藤レポート」のメッセージが本当に日本企業に浸透したのかと疑われるデータが載っていることだ。

 PBRに関する項に続き、報告書ではROEの分析がなされている。これによると、TOPIX構成銘柄の中央値で見た場合、伊藤レポートが発表された14年度は7.64%だったのに対し、15年度は7.40%、16年度は7.65%。09年以降は改善傾向にあるとはいえ、リーマンショック後の持ち直しの影響も大きく、ここ数年は企業統治改革が進んできたと言われている割に、数値的な状況はほとんど変わっていないのだ。

「2.0」の報告書では「日本(のROE)は全体として低い水準にある」という傾向が「『伊藤レポート』で指摘された状況と大きく変わっていない」としながらも、その理由について詳細な分析は見当たらない。「伊藤レポート2.0」というキャッチーな名称とすることは10回の研究会の中ほどで決まったそうだが、当初から目標であるROE8%への足取りが未だ不十分な現状の詳しい検証こそ、必要だったのではないか。