さらに言えば、報告書の位置付けも分かりづらい。「2.0」の公表に先立つ17年5月、経産省は企業価値の向上を目的として、企業経営者と投資家が対話を行って経営戦略や非財務情報を開示し、評価する際などの手引きとなる指針「価値協創ガイダンス」を発表している(これは先述の通り「2.0」の提言にも示されている)。経産省側は、「2.0」はESGはじめ長期投資の重要性を幅広く分析したもので、経営者や投資家が実務に活かす場合は「価値協創ガイダンス」を手引きや「共通言語」と位置付けて参照してほしいと説明する。

 だが、その望みも薄いかもしれない。日本投資顧問業協会が12月下旬に公表した運用会社など機関投資家200社超へのアンケート(調査は17年10月実施)によると、先の「価値協創ガイダンス」を「活用している」と答えたのは全体の4分の1。半数超が「活用していない」と答え、1割の会社は「今後も活用する予定はない」、全体のうち15社はそもそも「ガイダンスを知らなかった」と回答した。

「2.0」の報告書でも主題のESGに関しては、これを考慮することで投資パフォーマンが向上するのか、世界的にも明確な結論が出ているわけではない。それだけに、数値目標を入れるのが難しかったとの事情もある。とはいえ、ESGに基づく長期投資は世界的な潮流であり、その重要性はもっともなだけに、「伊藤レポート2.0」という目を引く表題を掲げたなら、位置付けや訴求点をもっと明確に打ち出すべきではなかったか。

 当初の伊藤レポートでは、「ROE8%」という言葉が独り歩きした側面もあったものの、コーポレートガバナンスの改革を促す意味でインパクトは大きかった。「2.0」は効果的な打ち出しがされず、「看板倒れ」に終わってしまった感が否めない。