Andrew Osborn and Jack Stubbs

[モスクワ 13日 ロイター] - ロシアのショイグ国防相は、ダマスカスからドーハに至る、思いもよらない場所にその姿を現している。プーチン大統領の下で軍の影響力が強まっている兆候と言えるだろう。

ここ数カ月、時に砂漠用の迷彩を施した軍服を身にまとったジョイグ国防相は、ダマスカスではシリア大統領と協議し、エルサレムではイスラエル首相に会い、ドーハではカタール首長の歓迎を受けた。

長く外務省の縄張りと思われていた分野に国防相が踏み込んでいることは、ロシア国内でも驚かれている。厳しい外交儀礼に基づけば、閣僚は直接のカウンターパートとのみ協議するのが普通だからだ。

ウクライナでは、2014年にロシア非正規部隊による掌握を経てクリミア半島を併合し、シリアではロシア軍の支援により戦況が変化し、アサド大統領側が優勢となっている。こうしたロシア政府が大きな成功とみなす状況から、軍は政治的な配当を受け取っている。

「トップレベルでの(軍の)影響力が増すことになった」とロシアのベテラン当局者は語る。国防省とも接触しているが、メディア向けに語る権限を持っていないとして、この当局者は匿名を希望した。

ロシア政府、国防省、外務省からのコメントは得られなかった。ただし国防省・外務省双方を知る関係筋3人は、こうした傾向が見られることを認めている。

軍の影響力増大に伴い、ロシア外交官の一部は不満を示しており、また西側当局者のあいだでも、ロシアの外交政策に強硬な側面が生じているという懸念を呼んでいる。

外交政策決定が以前より敵対的かつ不透明になっていることから、ロシアが新たに大胆な軍事行動を起こす可能性が高まっている、と一部の西側当局者は警鐘を鳴らす。

「外交政策について、これまでより大きな発言権を国防省に与えると、トラブルの種を探すようになる」と、ある当局者は、問題の微妙さゆえに匿名を条件としてと語った。

ショイグ国防相の派手な活動により、3月の選挙で4期目をめざすプーチン大統領が突然辞任せざるを得なくなり、6年間の任期を務めることができない場合、長年忠実な部下であったショイグ氏が代理を務めることになるのではないかとの噂が再燃している。

62歳のショイグ氏は政党政治には関与していないが、世論調査では、大統領候補の人気ランキングでトップ5に入ることが多い。信頼度ではプーチン大統領に次ぐ2位につけることも多く、この夏にはプーチン氏と旅行先で釣りを楽しむ様子が撮影されている。

<シリアでの役割>

ロシア、そしてその前身であるソビエト連邦での軍の影響力には、浮き沈みが見られる。

大きな影響力を持っていたのは第2次世界大戦終戦時、そして1950年代に旧ソ連の指導者スターリンが死亡した後である。このときはナチスドイツの打倒に重要な役割を果たしたと評価されるゲオルギー・ジューコフ元帥が国防相の座にあった。

だが、1989年に完了したアフガニスタンからの不名誉な撤退、ソ連崩壊後の2度にわたるチェチェン紛争、2000年に乗員118人全員が死亡した原子力潜水艦クルスクの沈没事故によって、軍の名声は地に墜ちた。

旧ソ連の国家保安委員会(KGB)諜報員だったプーチン氏が、軍の最高指揮官でもある大統領に就任すると、軍の株は上昇した。国防費は増大し、軍はジョージア、ウクライナ、シリアに派遣され、その活動は愛国心高揚のために利用された。

政治・外交政策における軍の影響力増大が最も顕著に現れているのが、シリアだ。

ジョイグ国防相は今年すでに2度ダマスカスを訪れてアサド大統領と会談しており、今月再び、同大統領と会談したプーチン氏に随行した。一方、ラブロフ外相は今年に入り一度もシリアを訪れていない。

国防相としては異例のことだが、ショイグ氏はシリア和平のための外交努力にかかわっている。この役割のなかで、ショイグ氏はシリアにとっての新憲法制定の重要性を語り、シリア問題に関する国連特使と会談し、イスラエルのネタニヤフ首相、カタールのタミム首長と協議している。

ロシア外務省や国防省と直接の接触がある西側当局者によれば、ロシアの軍は政府に対して、外務省とは質の異なる現実的な影響力を持っているという。

この当局者によれば、ロシア軍とシリア政府上層部のあいだには「強い相互信頼関係」が築かれている。理由は「ロシア軍がシリア政府上層部の安全を守り、彼らがそれを重く見ているから」だという。

ロシア外務省も依然、有能な中東専門家を抱え、引き続きシリアで重要な役割を演じており、カザフスタンでの和平協議を支えている。

だが、シリアにおける米ロ両国の協力合意を取りつけようとするラブロフ外相自身の努力は、時に外務省と国防省の考えが大きく異なる場合があることを如実に示している。

ラブロフ外相は依然として、プーチン大統領の信頼と敬意を受ける優れた外交官だと見られている。だが西側の当局者らによれば、同外相は必ずしも重要な会議すべてに呼ばれるわけではなく、シリアでの主要な軍事作戦についても知らされていないという。

<政策への介入>

複数の米情報機関は、これ以外にもロシア軍が外交政策に介入している例として、昨年の米大統領選挙におけるロシア干渉疑惑への関与を挙げている。

米情報機関によれば、ロシア軍の対外諜報部門GRUは米民主党の職員や政治家のメールアカウントに対するハッキングを行い、トランプ氏の主要ライバルだったヒラリー・クリントン氏にとって世論が不利になるよう、メディアへのリークを画策したという。

ロシア政府はこうした容疑を否認している。

他にも、政治介入の例として、ロシア国防省は2015年12月、トルコのエルドアン大統領とその一族が、シリア及びイラク領内で過激派組織「イスラム国」の支配地域から石油を違法に密輸することで利益を得ている証拠をつかんでいる、と記者会見で発表した。

この告発は、トルコ空軍機がシリア・トルコ国境近くでロシア機を撃墜した1週間後の記者会見で行われており、エルドアン氏は誹謗中傷にすぎないと一蹴している。

この事件に対するロシア国防省の対応は、同国の外交官らに比べてはるかに厳しいものであり、米国務省や米国政府の外交政策に対する度重なる批判を含めた、幅広い広報政策の一環とみなされている。

その他に国防省が関心を示している地域としては、エジプト、スーダン、リビアがある。

ショイグ国防相は、先月モスクワで行われたプーチン大統領とスーダンのバシル大統領の会談にも参加している。またロシア国防省は1月、リビア東部の有力な軍指導者であるハリファ・ハフタル司令官を招き、ロシア唯一の航空母艦に乗艦させた。この訪問のあいだ、ハフタル司令官はショイグ氏と中東のテロ対策についてテレビ電話で協議した。

こうした出来事によって、ロシアが空軍基地と海軍施設を持つシリア以外に、イエメン、スーダン、アフガニスタンといった要衝にも拠点を広げることを計画しているのではないかという懸念が高まっている、と西側当局者はロイターに語った。

ロシア国内のアナリストや西側当局者は、ロシア国内の政策策定に関しても軍の影響力が拡大していると指摘する。デジタル経済から食料安全保障に至るまで、あらゆることについてプーチン大統領が軍の意見を求めているからだ。

理由の1つには、ウクライナからクリミア半島を奪取して以来、プーチン大統領が意志決定の方法を修正し、自ら議長を務める安全保障会議が扱う範囲を広げて、国内政策課題の多くについても討議するようになったことがある。

「ますます敵に囲まれるようになったとのロシア側の感情があるなかで、プーチン大統領は、あらゆる決定について、これまで以上に情報機関と軍に相談するようになっている。いつも彼らと会っている」。そう語るのは、シンクタンク「センター・フォー・ポリティカル・テクノロジーズ」の分析部門を率いるTatyana Stanovaya氏だ。

同氏は、軍が政策の原案を示すという意味ではないと述べた上で、プーチン大統領はこれまでに比べて軍の意見をはるかに重視するようになっており、国内政策分野でも軍が重要な発言権を持つようになっている、と語った。

(翻訳:エァクレーレン)