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吉田恒のデータが語る為替の法則

【2012年相場見通し(3)】
記録的な割高となっている豪ドル/米ドルのカギを握るQE3

吉田 恒
【第178回】 2011年12月28日
著者・コラム紹介バックナンバー

 2012年の為替予想第3弾は、ユーロ、豪ドルの年間予想です。

ユーロは短期で強気だが、中期では弱気

 最初に結論をお話しします。

 ユーロは短期強気、中期弱気と考えています。

 短期的にはユーロ/米ドルは1.4ドル程度までのユーロ高がありそうだと思っていますが、その後は1.1ドルを目指すといったシナリオです。ただ、ユーロ/円は100円を大きく割り込まないかもしれないと思っています。

 このような見方になる理由の1つは、対米ドルでは「割高」だが、対円では「割安」といった具合に、ユーロはまったく別の顔を持っているということです。

 ところで、豪ドルも対米ドルと対円で「割高」に差があります。記録的な対米ドルでの豪ドル割高が修正に向かうかは、「QE3(量的緩和策第3弾)」がカギを握っていると考えています。

ユーロの割高維持はなぜ難しいのか?

 まずは「資料1」をご覧ください。

 これは、ユーロ/米ドルの適正価格の目安である購買力平価からのかい離率のグラフです。

 ユーロ/米ドルの購買力平価は、現在1.2ドル程度ですから、これだけ欧州債務危機への懸念が強い中でも、1.3ドル程度でユーロが推移している中では、ユーロは適正価格より割高ということになるわけです。

資料1

 欧州債務問題への、独仏を始めとしたユーロ圏各国の対応が強い批判を浴びていますが、そのような批判が正当かは別にしても、この問題が簡単には解決しない、解決にかなり時間のかかる問題であるといった点についてはほとんど異論がないと思います。

 特に、金融政策については、ECB(欧州中央銀行)が利上げを再開するのはかなり先になりそうです。

 米国のFRB(連邦準備制度理事会)も2013年まで利上げをしない、つまり、2012年中には利上げをしない方針としていますが、債務問題の深刻さ、そして、欧州の債券急落に伴い損失を受けた欧州の銀行の信用不安などを考えると、ECBの利上げはFRB以上に時間がかかりそうだと考えるのが普通ではないでしょうか?

 このような金融政策の見通しなどからすると、ユーロが割高を維持するのは普通に考えて、まず難しいと思います。

 中長期的な悪材料である欧州債務問題を抱え、それに対して低金利などの政策対応を長期的に余儀なくされると予想されるユーロとしては、基本的には適正価格より割安へ向かう動きと考えるのが基本でしょう。

1.18ドルを割り込めば、ユーロ安加速の可能性も!

 適正価格の目安である購買力平価が先ほどお話ししたように1.2ドル程度ですから、基本的にはそれを割り込む流れということでしょう。

 ユーロは、2010年に世界経済を震撼させたユーロ危機第1幕で、一時1.18ドルまで急落しました。それを割り込むようだと、一段とユーロ安が加速する可能性も十分あると思います。

ユーロ/米ドル 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足

 あとで詳細に述べますが、一方で、私は短期的にはユーロが1.4ドル程度まで反発する可能性もあると考えています。ただ、それが当面のユーロの戻り高値の限度だろうと思っています。

 仮に、1.4ドルが2012年のユーロの上限になるなら、このところ1年間のユーロ/米ドルの値幅は、2000~3000ポイント程度が普通なので、2012年のユーロの下値メドは1.1~1.2ドルといった見通しになるでしょう。

ユーロは対円ではすでに割安になっている

 さて、このように数年スパンの中長期的な懸案である債務問題を抱えながら、依然として対米ドルでは適正価格より割高なユーロだけに、2012年は一段安が不可避と考えているわけですが、ほぼ同じような理屈で考えると、対円でのユーロ下値は対米ドルに比べて限られそうだと思います。

 そこで、次ページの「資料2」をご覧ください。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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