シャープは戴正呉社長を含む4人の共同CEO制に移行する。後継者選びの実質先送りは、大胆で迅速な意思決定を得意とする鴻海らしくない

シャープが共同CEO制へ移行
台湾流ではない後継者選びの先送り

 先月7日、シャープが1年4ヵ月ぶりに東証一部に復帰した。それに合わせてシャープのトップは、戴正呉社長を含む4人の共同CEO制に移行するという。「さすが鴻海、業績を回復させたらすぐに後継者にポストを譲るのか」という見方がある一方で、「戴社長も共同CEOに残るのだから実質何も変わらない、日本人社員向けのポーズだ」という斜に構えた見方をする人もいる。

 日本人社員向けという側面が全くないとは限らないが、これまで多くの日本の家電メーカーが社員のモチベーションを失わせてきたことを考えれば、経営陣が自社の社員のモチベーションに目を向けたことは悪いことではない。日本の現場のポテンシャルは今でも強い。問題は経営にあったのだ。

 もう少し突っ込んで考えると、今回の共同CEO制移行は、単なる社内的なポーズというだけではなく、後継CEO任命の先送り人事というようにも見える。戴社長以外の3人の共同CEOは、全て戴社長の後任候補と見られている。

 しかし、現時点では誰も後任として明確にアサインされていない状況であるため、後任指名の先送り人事という解釈もできるわけだ。大胆で迅速な意思決定が鴻海流であり、台湾流の意思決定である。とすれば、意思決定の先送りは台湾流らしくないようにも映るが、実際はどうなのだろうか。

 そもそも共同CEOという制度は鴻海だけでなく、台湾企業によく見られるトップ人事である。最近であれば、たとえば世界最大の半導体製造会社である台湾TSMCが、「台湾半導体の父」と呼ばれたモリス・チャン(張忠謀)会長の後任候補として、2人の共同CEOを2018年6月に就任させると発表した。

 TSMCはファウンドリと呼ばれる半導体製造に特化した半導体製造企業の先駆けである。1980年当時、まだ台湾のハイテク産業が現在ほど成長すると思われていなかった頃に、チャン会長はTSMCでファウンドリという事業形態を実現した。

 当時の半導体先進国の米国では、多くの学者や半導体業界関係者が「ファウンドリモデルはうまくいかない」と主張する中で、チャン会長はTSMCを世界最大の半導体製造企業に成長させた(台湾半導体産業の歴史については拙著『台湾エレクトロニクス産業のものづくり』で詳説している)。チャン会長は世界の半導体業界全体にも大きな影響力を持つカリスマ経営者であり、TSMCの唯一のリスクはチャン会長の後継者とまで言われていたくらいだ。