福島第1原子力発電所の事故で、日本のエネルギー政策は重大な転換点に立たされている。「未来を担う世代には発言する権利がある」。2ヵ月余りにわたって80人の大学生・大学院生がエネルギー問題に取り組んだプロジェクトは、うちの約60人が「私のエネルギー提言」をまとめ、首相官邸、前原誠司民主党政調会長、谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表に直接、手渡した。思いはどのようにまとまり、どのように受け止められたのか。生涯を通して共存していくべき原子力問題に対して、一歩を踏み出した学生たちを追う。(メンター・ダイヤモンド委嘱記者 藤原秀行)

猪瀬東京副都知事の叱咤で
目覚めた学生たち 

60人の大学生が<br />官邸に届けたエネルギー提言<br />3月11日を「安全の日」に忌憚のない講評で、学生たちの心に火をつけた猪瀬直樹氏
Photo by Toshiaki Usami

「もっと現場に足を運び、汗を流せ。この場で発表するならば、そこまでの提言でないと意味がない」。講評者として招かれた東京都副知事の猪瀬直樹氏から、強い口調の叱咤が飛び、プロジェクトに参加している60人の学生たちは凍りついた。

「エネルギーの未来2011」は、首相官邸や与野党へのエネルギー政策提言を直前に控えた12月18日、東京・千代田区KKRホテル東京で「提言前日祭」を開催、6人の学生代表が中間発表を行った。都政の一環としてエネルギー政策に力を入れている猪瀬氏にしてみれば、学生が背伸びしているだけの物足りない内容だった。

 無理もない。晴れの舞台を意識するあまり、その時点での発表は表面的で、何かを聞きかじってまとめたような印象を与えていた。