結局、彼を説得できたのは妊娠3ヵ月を過ぎた頃。妊娠3ヵ月以内の「初期中絶」の場合、胎児と胎盤を特殊な機器で取り出す手術です。母体の負担は最小限で済みますが、美鈴さんの場合、すでに妊娠3ヵ月を過ぎていたので「中期中絶」です。これは陣痛を促す薬を投与し、力ずくで子宮口を開き、無理やり分娩させる方法です。

 このように初期より中期の方が母体の負担が大きい分、手術費用も高額です。美鈴さんが通っていた病院の場合、初期の場合は30万円、中期の場合は2倍(60万円)に跳ね上がったそうです。

 しかし、幸か不幸か被災者の医療費は免除されるという特例があり、罹災証明書を持参すれば医療費を払わずに済み、美鈴さんのように災害とは直接関係のない「中絶手術」「術前術後の検診」についても適用されるので、彼のせいで膨れ上がった医療費を負担せずに済みました。医療費がタダだったのは、たまたま美鈴さんが被災者だったのが理由で、彼のおかげではありません。

「このままじゃ気持ちの整理がつかないし、怒りが収まらないですよ!」

 美鈴さんはそんなふうに激高しました。きちんと彼に責任を取らせなければ、美鈴さんも今回の件を一区切りにし、彼の存在を「なかったこと」にできないのも当然といえば当然。実際のところ、医療費の自己負担がゼロだからといって中絶に伴う費用が全くないわけではありません。

彼に子どもの供養、火葬、埋葬費用を請求
彼から9万円の振り込み

 まず美鈴さんは水子の供養をお寺に依頼しようと考えていたのですが、地蔵尊像の建立として2万円、お布施として2万円がかかるようです。美鈴さんは中期中絶だったので、赤子を火葬し埋葬費用5万円をすでに支払っていました。

「すべて(学歴、勤務先、年収)正しければ、喜んで結婚したし、子どもも出産したし、一緒に育てていけたはず。水子の供養、火葬、埋葬の費用は発生しなかったんだから、あなたが負担するのは当然でしょ!」