これに対し、日本の健康保険制度では、患者の負担を一定割合(現在の場合は原則30%)に抑えてくれます。例えば、実際の手術で10万円掛かっても、自己負担は3万円程度に抑えられます。そこで患者は、健康保険制度の下で安心して医療を受けられるようになる分、自由診療と比べて、多くの患者が気軽に医療機関に行けるようになります。

 その結果、民雄を含めて「健康保険になる客」をもっぱら受け入れている歯科医に、患者が集中したわけです。言い換えると、映画に出てくる歯医者は「儲からない健康保険の安い客」を数多く受け入れることで、患者の"数"を優先していることになります。

 これは、まさに「薄利多売」の状況。だからこそ「安い料金しか取らないからはやり過ぎる」「忙しいばっかりで儲からない」と愚痴っているわけです。

現在4.154%の保険料率が
当時は1.875%

 では、当時の診療報酬はどれくらい低かったのでしょうか。報酬の詳しい単価は映画では出てきませんし、物価や賃金、医療技術が違うため、一概に比較できません。

 しかし、几帳面で数字に強いキャラクターに設定されている民雄が、手取りの給与を説明してくれる場面があります。

「僕の現在の本給は1万6000円。オーバータイム(注:残業)が1ヵ月平均500円。そこから健康保険料300円、厚生年金250円、失業保険料150円、所得税1100円、社宅料500円の基本出費を引くと、1万4200円の手取り給料です。食費、足代、衣服費、小遣いを引いて4000円残っていい方だ。これが現実なんだ」