米韓合同軍事演習に参加した米空軍F16(右)とF35A=米空軍提供

 過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがあった。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからだ。だが、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧された。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯があった。

 いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の量産体制に入ったとも見られる北朝鮮の“脅威”は当時の比ではない。当然、米国本土も無傷では済まないはずだ。

 ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されるかもしれないというのだ。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか。裵氏が説明する。

「攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといいます」

 北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃する。むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩く。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順だ。

 開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜める。だが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行する。裵氏が続ける。

「さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をする。おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは思えないのです」