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巨額買収も高値掴み懸念で株安
試される東京海上の海外戦略

週刊ダイヤモンド編集部
2012年1月6日
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昨年12月21日、デルファイ買収について会見する東京海上HDの隅修三社長
Photo:JIJI

 「手前味噌とはいえ、よい案件なのだが……」

 2011年も押し詰まった12月21日。東京海上ホールディングス(HD)が、国内損保業界で今年度最大となる大型買収を発表した。

 子会社の東京海上日動を通じて、米国の中堅生損保グループ、デルファイ・ファイナンシャル・グループを26億6400万ドル(2050億円)で買収し、完全子会社化する。

 買収資金は、外部調達と手元資金で賄い、12年4~6月中に全株式取得を完了する予定だ。デルファイは、企業向けの労働災害保険などに強みを持ち、10年12月期の純利益は、1億7400万ドル(136億円)という優良企業である。

 東京海上HDは、買収目的として「米国の優良会社買収を通じた海外事業の規模・収益の拡大」「分散がきいた事業ポートフォリオの構築」「既存米国事業との補完関係を生かした新事業展開」を挙げ、その成果を強調した。

 にもかかわらず、市場の反応はすこぶる鈍かった。東京海上HD株は発表翌日の22日、一時60円安の1682円まで売られ、5年ぶりの安値へと転落。ムーディーズ・ジャパンも同日、東京海上日動の保険財務格付けを引き下げ方向で見直すとした。

 同社幹部は冒頭の言葉とともに深いため息だ。マーケットでは、2000億円超という買収金額が高値掴みなうえにリスク資産となるのではと懸念されている。さらに、成長が見込まれるアジアなどの新興国ではなく、成熟市場の米国での買収だったことで、魅力に乏しいとの見方も広がった。

 これまでの東京海上HDの大型買収案件は、07年の英国キルン(930億円)を手始めに、08年の米国フィラデルフィア(4715億円)、そして、今回のデルファイと“欧米”に偏っている。この3社だけで、同社の海外保険事業の保険料収入に占める割合は、54%に達すると試算されている。

 対照的に、ライバルであるMS&ADHD傘下の三井住友海上は昨年5月、インドネシア最大の企業グループ傘下のシナールマス生命と資本提携、672億円を出資してアジア重視を鮮明にしている。

 三井住友海上とシナールマス生命の案件で競合していたのは、東京海上HDだったが「高値掴みと判断して降りた」と別の東京海上HD幹部は言う。だが、インドネシアの保険市場は、2ケタ成長が続く。

 「現在の東京海上はよくも悪くも欧米偏重。アジアを重視していないが、もう少し力を注ぐべきだ」と前出の東京海上HD幹部。

 隅修三社長は会見で「引き続き案件を探す」とした。その視線の先にアジア市場があるのか、要注目だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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