David Lawder

[10日 ロイター] - 中国は世界最大の米国債保有国であり、それを使って自国通貨の価値をコントロールしたり、巨大な外貨準備金を蓄えたりしている。

ブルームバーグは10日、中国当局者が米国債の購入を縮小するか、もしくは停止することを検討していると報じた。これを受けて、米10年債の利回りは一時10カ月ぶりの高水準となった。

だが、さまざまな理由により、米国債に関しては、中国が行動できる余地は限られている。

以下、今回報じられた動きについて、基本的な背景と展望をまとめた。

●そもそも、なぜ中国は1.2兆ドル(約134兆円)に上る米国債を保有しているのか。

長年の貿易黒字によって拡大した中国の巨大な外貨準備金の一部を蓄えるため、十分な流動性を有する商品は米国債だけだと考えられていることが一因だ。

また、中国は自国通貨の人民元をドルに連動させているため、政府によるドル資産の売買は主に、自国通貨の価値をコントロールする目的で行われている。米財務省のデータによると、時間の経過とともに、中国の米国債保有はおおむね安定している。

●保有米国債を本当に売却、もしくは削減できるのか。

もし中国人民銀行(中央銀行)が本気で米国債に見切りをつけたと市場が受け止めれば、米国債の追随売りを招き、自身が保有する外貨準備の価値も下落する結果を招く。それは、政治的、経済的な理由からみても歓迎すべきことではない。

仮に中国人民銀行が米国債保有を削減したとしても、代替投資先はほとんど見当たらない。米10年債は、独10年債よりも200ベーシスポイント以上利回りが高い。日本の10年債の利回りはほぼゼロだ。

一部アナリストは、中国が投資先を、不動産ローンや預金など他のドル建て資産、もしくはユーロや円など他通貨建ての資産、もしくは新興国債に移す可能性があると指摘している。

●米国に対して単に警告を発しているのか。

トランプ米大統領の貿易を巡る強硬発言に対して、中国当局は困惑している。事情に詳しい関係者をソースとする今回の報道について、米政権に警告を発する意図が背景にあると指摘するエコノミストや中国ウォッチャーもいる。

トランプ大統領の強硬発言とは裏腹に、アルミニウムや鉄鋼を巡る関税問題では、ほとんど前進がみられない。また実際のところ、トランプ政権下で米経済は順調な成長と雇用拡大を遂げており、米国の対中貿易赤字は拡大している。米国の対中貿易赤字は、2017年1─11月は3444億ドル。前年同期は3193億ドルだった。

●米国債利回りへの影響は。

中国の買い入れが減れば、米国債の需要全体が減少し、米財務省は国債を売るため、より高い利回りを支払わなければならない。

米連邦準備理事会(FRB)による国債買い入れ縮小や歳入不足を補うため、米国は国債の発行を拡大する。

FRBは、金融政策の正常化に向けて、保有する2.5兆ドルの米国債の縮小に着手している。2018年度予算によると、米政府の利払い負担は2017年度で過去最高の2740億ドルに達しており、2022年には5280億ドルへの拡大が見込まれている。

●中国が手を引けば、別の買い手が出てくるか。

中国が米国債の購入を減らした場合、代わりに参入する可能性がある買い手としては、他の国家や銀行、大手アセットマネージャー、そして保険会社などが考えられる。

米国債は、他の資産と比べて比較的安全で流動性があることが好まれている。保有流動資産に対する規制を満たさなければならない銀行からの需要もある一方で、デリバティブなどを含む取引の担保としても利用できる。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)