【Part 01】 / 【Part 03】

欧米人は住むことを自分のスタイルと心得ている

美術史家/武蔵野美術大学名誉教授
柏木 博さんが語る

日本で暮らす、外国人たちの住宅【Part 02】© MAK Center / Photo by Joshua White

その人らしさを表す
それが家でありインテリア

 気に入ったように住む。言い換えれば、家を“整える”ということは、多くの人にとって人生の一大事です。

 家という空間は“その人らしさ”をあらわすものです。つまり、家はそこに住まう人の換喩(=メトミニー)なのです。家は、そこに住む人がもっとも安心してくつろぐ場所であり、その人の愛する書物や趣味で集めたものや、吟味された家具や日用品が詰め込まれている場所です。

 だから、好みの空間を仕立てることは自らの存在を作りあげていくことであり、それは私たち自身の心のあり方や体の健康にも大きな影響を与えることでもあります。私たちは、家に住むということについて、一体どれぐらい真剣に考えているのでしょうか。

 たとえば私の友人のドイツ人はこんな住まい方をしています。

 彼の部屋は、ものの置き方がすべてグリッド状になっています。たとえばCDをテーブルの上に積み上げているのですが、それがいつも美しく整えられています。雑誌も全部、マンハッタンの街区を思わせる並べ方。室内全体がそのような状態です。美意識が強くあることが、部屋に入った瞬間にわかるわけです。

 彼はドイツ企業の日本支社の社長で、家族は本国にいて東京では独り住まい。行くといつもたくさんの料理を出してくれるのですが、冷蔵庫の中も同じように整理されていて、他人が開けてもどこに何があるかすぐにわかります。

 彼はおそらく小さい頃からずっとそういう風に生活してきたのだと思います。生活の中で空間をグリッド状に割っていくスタイルがからだに沁み込んでいるのでしょう。おそらく彼の親やその親も、美意識がそのようなスタイルになっているのだろうなと思うわけです。

 基本パターンを格子状に組んでいくグリッドシステムはグラフィックデザインの世界でよく知られていますが、昔から都市の構造にも用いられていました。古い都市をグリッドでというのは、権力者が全部見渡せるように作られたものと言われています。

 管理システム上、見えやすくて便利というメリットから採用された考えが、個人宅に適用されると、ある種の美意識の表れのようになるというのは面白いですね。

 もう一人、住まいということで思い出すのは、ニューヨークに住んでいるオーストリア人です。このひとはかつてはパリのポンピドゥーセンターキュレーターで、現在は大学で教鞭をとっています。

【グリッド】
画面に表示される格子状の線のこと。グリッドシステムとは、レイアウトを行うときに画面上に架空の縦横の線を引き、そのブロックごとに文字や図版を配置す る方法。すっきりと見やすい画面ができる。
【ポンピドゥーセンター】
フランス、パリにある総合文化施設。現代美術を多数展示。施設の発案者であり、仏第五共和政の第2代大統領で、現代美術の擁護者として知られるジョルジュ ・ポンピドゥーの名を冠している。
【キュレーター】
博物館や美術館で研究・収集・展示・保存・管理などを担当する人。収集品の鑑定や研究も行い、学術的専門知識が必要とされる。この言葉が入ってくるまで、 日本では学芸員という名前で知られていた。