2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。第6回は、第一次橋本内閣で経済企画庁長官を務めた福山大学客員教授の田中秀征氏である。

①消費税増税はまたも暗礁に乗り上げる

消費税増税、TPP参加はまたも暗礁に<br />野田政権下で政治的・社会的混乱が加速する<br />――田中秀征・福山大学客員教授たなか・しゅうせい/元経済企画庁長官、福山大学客員教授。1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。現在、福山大学客員教授、「民権塾」塾長。

 野田佳彦首相は、消費税増税に「不退転の決意」で臨むが、次の理由によって消費税増税は実現できず、政治的、社会的混乱が招かれる。

(1)消費税増税は「民主党の公約違反」という声が強まる

(2)「決める前に民意を問え」という世論が大勢となり、法案の成立は至難の業となる。

(3)小手先の行政改革で増税に走ることを(国民が)許さない。

(4)経済や国民生活の状態がさらに悪化することが予想される。

(5)消費税増税を強行するには、政権の人気や信頼感が不可欠だが、現政権にはそれがない。

 特に、「決めてから民意を問う」という政治手法には世論が猛反発するだろう。