独自の優遇措置を整備し
本社機能の移転誘致を推進

 これらのインフラ整備に加えて、茨城県が今注力するのは、国が地方創生の柱として位置付けている本社機能移転の推進だ。同県立地推進室では「若者にとって魅力のある質の高い雇用を生み出すため、成長分野をターゲットに、東京圏からの本社機能の誘致に力を入れている」と説明する。

 具体的には、本社機能の移転・拡充に関して、国税の優遇措置等(地方拠点強化税制)に加えて、全国トップクラスとなる県税の特別措置(法人事業税・不動産取得税の減免)を独自に設けている。また、他県から茨城県へ本社機能を移転する場合は、移転の経費(移転費用や社屋建設費等)について、補助率50%で最大1億円となる補助制度を創設した。

 ちなみに国の地方拠点強化税制では、県南西地域の一部の近郊整備地帯が対象外とされているが、県の優遇措置ではこの地域もカバーし、対象地域を県内全域に拡大している。

 これらの優遇制度を利用すると、例えば東京に本社機能がある企業が、設備に5億円投資して30人が転勤、地方で20人新規雇用した場合、地方拠点強化税制で9200万円、県税の特別措置で1330万円の減税が実現する。

 こうした本社移転の推進はすでに成果を出し始めており、1都3県の本社移転企業調査(16年、帝国データバンク調べ)によれば、16年に東京圏から移転した企業の転出先のうち、茨城県が24社(構成比11.1%)で国内最多となっている。

 また企業が研究所を新設する動きも加速している。17年5月、高砂熱学工業はつくばみらい市に先端技術の研究開発・技術開発を行う技術研究所の新設を決定、現在の技術研究所(神奈川県厚木市)の約6倍となる約2万3000平方メートルの土地を取得済みだ。

 ものづくり企業に加え、優れた技術シーズを活用する企業のスタートアップも積極的に支援する茨城県。さまざまな優位性を生かしつつ、新しい豊かさを実感できる力強い産業と、質の高い雇用創出の実現を目指している。

 立地事例 1 
電動車両用モーター事業の合弁会社で「第1号認定」
日立オートモティブ電動機システムズ
山口 登代表取締役社長

 日立オートモティブ電動機システムズは、日立オートモティブシステムズと本田技研工業による合弁会社として2017年7月に設立された。現在、18年からの生産立ち上げに向け、ひたちなか市にある日立オートモティブシステムズ佐和事業所の敷地内で、製造設備の建設を予定している。新会社の設立に当たり、茨城県の「本社機能移転促進補助金」対象事業の認定(第1号)を受けた。山口登社長は「茨城県は日立発祥の地であり、日立の創業製品もモーター。欧州、中国などの国家政策もあり、今後は電動車市場が大きく拡大すると予想される。当社の主力事業であるモーターの需要の拡大にも大いに期待している。装置産業である当社は、設備・研究施設に費用がかかるため補助金はありがたい。茨城の地で競争優位性と強固な事業基盤を整備し、グローバルにシェアを拡大したいと考えている」と抱負を語る。

日立オートモティブ電動機システムズ 本社

 立地事例 2 
工場と事業所を統合して移転、売り上げも増進した
東京ネジ製作所 (2018年4月から“トーネジ”に社名変更)
岡部 純代表取締役社長

 1957年に設立された東京ネジ製作所。締結部品の製造に60年の実績を持つ専門メーカーだが、施工時間を短縮するセットボルト「D・LOCK」や、環境に優しいリサイクルボルト「HugBolt」など、画期的なボルトの開発でも注目を浴びている。従来まで埼玉県三郷市に工場、東京都葛飾区に事業所と倉庫があったが、2016年8月につくば市みどりの中央に"つくば事業所・つくば工場"として両者を統合移転、18年春には本社を全面移転する予定だ。岡部純社長は「工場が手狭なため新たな立地場所を探していたが、経済産業省の補助事業や茨城県の優遇措置の対象に採択され、また三郷で勤務していた従業員の通勤の負担が少ないことから移転を決めた。スペースも広く操業時間に制限がないため生産量が増えて、すでに16年比で売り上げが35%ほど伸びている」と手応えを語る。

東京ネジ製作所つくば事業所

文部科学省 電源地域産業育成支援補助金充当事業

問い合わせ先
茨城県立地推進室
ホームページアドレス:http://www.indus.pref.ibaraki.jp/