CESに出展したクアルコムが、完全ワイヤレスイヤフォンによる音楽体験を向上させるオーディオ製品向けSoC「QCC5100」を発表した。このチップを搭載した完全ワイヤレスイヤフォンはどこに“差が付く”のか。クアルコムでオーディオ向け製品のプロダクトマーケティングを担当するシニア・ディレクター クリス・ハーヴェル氏に尋ねた。

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米クアルコムのクリス・ハーヴェル氏にオーディオ向けSoCの特徴訊ねた

 QCC5100は、現行モデル「CSR8670」の後継製品に位置付けられる。

 AD/DAコンバーター、DSP、CPU(クアッドコア)、Bluetoothの送受信用モジュール、バッテリーマネージメント回路を統合したSoCチップだ。大きな特徴は駆動時の消費電力を現行モデル比で65%も下げたこと。ハーヴェル氏は「SoC全体のアーキテクチャの見直し、必要なものについては主要コンポーネントを入れ替え、バッテリーマネージメントの仕組みにメスを入れた」と、画期的な低消費電力化を実現できた理由を説明した。

 最新のSoC、QCC5100ではスマホやプレーヤーなどソース機器とイヤフォン間の接続性能がある一定条件の下で大きく向上する。

左右それぞれが1体1でプレーヤーとつながる

 現在はどの完全ワイヤレスイヤフォンも左右どちらかのイヤフォンがマスターとなってソース機器とBluetoothでつながり、その後にマスター側からスレーブ側のイヤフォンにBluetooth、またはNFMI(近距離磁気誘導)で音楽信号を伝送する仕組みを採っている。

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完全ワイヤレスでバイオメトリック認証に対応したヘッドセットの参考デザイン

 一方、QCC5100を搭載する完全ワイヤレスイヤフォンであれば、昨年末に正式発表された最新世代のモバイル向けSoC「Snapdragon 845シリーズ」を搭載するソース機器につないで、左右のイヤフォンに対してそれぞれ1対1でBluetooth接続ができる。

 結果としてより安定した信号伝送が可能になるという。Snapdragon 845を搭載したスマホやプレーヤーは今のところ発表されていないが、SoCの正式発表が完了したので、2月にバルセロナで開催される「MWC 2018」で端末の発表があるかもしれない。クアルコムはQCC5100を搭載する製品について「2018年前半に発売される見込み」としている。

 もうひとつの特徴は、QCC5100とSnapdragon 845のパワフルなプロセッサーの実力を活かすことで、aptX HDのコーデックによる48kHz/24bitのワイヤレスオーディオ再生が可能になる点だ。

完全ワイヤレスイヤフォンの課題が改善される?

 このようにクアルコムのオーディオ向け最新SoCであるQCC5100は「バッテリー」「接続性」「音質」という、これからの完全ワイヤレスイヤフォンのステップアップに必要な3つの要素に飛躍をもたらすことができるのだ。

 65%も電力消費が低くなるということは、従来のバッテリー容量・本体サイズをキープしたままでもイヤフォン単体での連続駆動時間をより長く伸ばすことができるだろう。あるいはイヤフォンのサイズを小型化したり、デザインの自由度が高まることにもつながる。

 接続性については信号のドロップ(欠落)やノイズが完全ワイヤレスイヤフォンのペインポイント(痛手)とされているので、これが払拭されることは何よりの福音だ。ハーヴェル氏によれば信号伝送の低遅延性能も高くなるという。気持ち良くリップシンクする動画視聴が楽しめるようになれば、完全ワイヤレスイヤフォンが活躍する場面が広がる。

 そしてaptX HD対応の高音質な完全ワイヤレスイヤフォンが増えてくれば喜ばしいことこの上ない。2018年前半の完全ワイヤレスイヤフォンの動向には要注目だ。

Type-C接続のイヤフォン・ヘッドフォン増加の可能性も

 クアルコムのブースにはもうひとつ、USB Type-Cのデジタル接続に対応するヘッドフォン・イヤフォン向けのSoCチップ「WHS9420/9415/9410」を使ったヘッドフォンのリファレンスデザインが紹介されていた。

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USBポータブルオーディオ向けのSoC「WHS94xxシリーズ」のリファレンスデザインを紹介。試作したヘッドフォンケーブルで音質の違いを披露していた

 最近はMacBookシリーズなどPCだけでなく、サムスンのGalaxyシリーズやソニーのXperiaシリーズなど、USB Type-C端子を乗せてUSBオーディオ出力にも対応するスマートフォンが増えている。

 USB Type-Cから外部DAC機器に接続してハイレゾオーディオ再生が楽しめるイヤフォン・ヘッドフォンがあれば、外出先での音楽リスニングが便利で手軽になりそうだ。USB Type-Cのオーディオ機器向けSoCは他の半導体メーカーにもプロダクトはあるが、ハーヴェル氏は「クアルコムのSoCは音質を意識した高いパフォーマンスを実現している点が他社にない強み」であると胸を張る。最上位のWHS9420は最大192kHz/24bitのリニアPCM信号のデコードに対応するDACを搭載している。

 Lightning直結型のデジタルヘッドフォンはもういくつかのブランドから発売されているが、今年はUSB Type-C接続のヘッドフォン・イヤフォンも続々と増えて、見逃せないサブカテゴリーにまで成長する期待が膨らんできた。