John Miller

[ダボス(スイス) 12日 ロイター] - スイスのアルプス山脈の麓にある町ダボスは、著名人や富豪には慣れているが、当地で23─26日の日程で開催される世界経済フォーラム(ダボス会議)への出席をトランプ大統領が決断したことで、新たに大きな注目を浴びている。

世界各国の政財界の首脳が集う毎年恒例のダボス会議に現職の米大統領が出席するのは、2000年のビル・クリントン大統領以来となる。

2015年の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱表明や「アメリカ第一主義」といったトランプ氏の政策は、スイスにとって受け入れがたいものかもしれない。同国はパリ協定を支持しており、経済は世界各国との貿易に依存している。

トランプ氏の偏った言動により、2000年代初めに起きたダボス会議に対する暴力的な抗議活動が再びよみがえる可能性を指摘する声も上がっている。トランプ氏を「歓迎できない」とするオンライン署名活動も始まっている。

とはいえ、11日時点におけるダボスの雰囲気は楽観的で、トランプ氏の存在でどんな騒動が起きたとしても、約1000人の警察官のほか、必要とあれば最大5000人の兵士が動員される厳重な警戒態勢ならば対処できると自信を持っている。

「最高だ」と、当時のクリントン米大統領がダボス会議に出席した際に滞在したホテルのディレクターで、現在は地域のホテル協会を率いるエルンスト・ウィルシュ氏は言う。

「少なくとも数日間、ダボスは世界の中心となる」

多くの要人が毎年訪れ、昨年は英国のメイ首相や中国の習近平国家主席が参加したが、観光に依存するダボスにスポットライトを当てるうえで、米大統領ほどメディアの注目を集める力はない。

「注目されて悪いことなどないと思う」と、標高1560メートルに位置するダボスの住民は、クロスカントリースキーのルートに向かう途中でこう話した。

トランプ氏の到着に備え、米当局者はすでにスイス入りしているが、会議の開催期間中に宿泊するかどうかも含め、スケジュールの詳細は明らかにされていない。

トランプ大統領のダボス訪問にはムニューシン財務長官のほか、ティラーソン国務長官やロス商務長官、娘婿のクシュナー氏も随行するが、大統領は会議には1日だけ参加し、スピーチを行った後にすぐ出発する可能性もある。

トランプ氏来訪には、矛盾する要素もある。

ダボス会議はグローバリゼーション支持者の集まりであり、トランプ氏が米国にとって不公平だと非難する自由貿易協定を彼らは支持している。

ダボス選出の国会議員であるハインツ・ブランド氏は、好戦的な態度ではなく、話し合う姿勢でトランプ氏には来てほしいと話す。

「ダボスでは、宿敵同士でも会って、来た時より良い関係で帰国の途に就く」と同氏は述べ、当時のパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長とイスラエルのペレス外相がダボス会議の場を共有したことを振り返った。

<変化>

スイス軍は、ダボスに通じる道路には検問所を、山腹には武装した野営地を設置している。これは、米同時多発攻撃後に治安問題が表面化してから、ダボス会議で見られる光景だ。

「今年で48回目の会議となる」と、ダボス・クロスターズ・ツアリズムのReto Branschi最高経営責任者(CEO)は語る。「毎年、世界中から20人程度の首脳がやってくる。首脳の訪問には慣れている」

昨年の会議では、スイス軍兵士4300人が配置され、空域は会議参加者が乗る航空機のみ飛行が許された。警備費930万ドル(約10億円)をかけた会議の治安対策を任され、米当局者と連絡を取っているダボスのあるグラウビュンデン州警察は、準備は整っているとしている。

「近年、空域閉鎖はうまくいっており、何も変更する必要はないと考えている」と、同警察の広報担当者は語った。

それでも、変更点はいくつかある。

数十年にわたり、参加者を乗せたヘリコプターは、生まれ育ったダボスで宿屋を営むハンス・シュティフラーさんの私有地に離着陸していた。

だが今年は、より広い、町の反対側に移されることになった。

今年はヘリコプターが来ないため、少しは静かになり、シュティフラーさんは家を離れるたびにセキュリティーバッジを携帯しなくてもすむようになる。

だが、クリントン氏からの礼状やライス米国務長官の写真、そしてヘリコプターで離陸する5分前にシュティフラーさんの宿で撮影されたブラジルのルラ大統領とイスラエルのペレス氏のツーショットといったダボス会議の思い出コレクションを増やすこともできなくなるかもしれない。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)