思考業務も分解して標準化

 ムダとりと同時に業務の実態把握も進んだ。情報を相手にする管理部門の業務は、高度な判断を伴う思考業務の割合が多いと思われている。確かにベテランのカン・コツ・ノウハウが重要な業務もあるが、すべてがそのように難易度の高い業務ではない。

 八千代工業でも、企画や開発、生産計画の立案などは、特定のスキルを持つベテランにしかできない業務となっていた。しかしHIT法を使って業務機能を細かく分析することで、かなりの部分まで可視化することが可能になった。

「例えば生産の現場で、生産計画に対して納期・数量・部品・加工順位などを決定するのはベテランの仕事ですが、そのベテランだってカンだけに頼って仕事をしているのではありません。過去の事例など何らかの基準を元に判断しているのです。企画書の作成にしても、過去の企画書を持ってきて、Webから参考資料を探して……といった部分はルーチン業務的な部分も多くあります。業務機能を分析して体系化することで、思考業務の標準化を進めていきました」(斎藤氏)

管理工数20~30%の削減を達成。さらに上を目指す

 このようにして進められた八千代工業のHIT法推進活動は、2011年末で約2年が過ぎた。さまざまな領域でムダとりを行った結果、当初目標としていた「間接部門の管理工数30%削減」の達成に近づきつつある。

「本社と四日市製作所に関しては、おおむね20%の管理工数削減ができました。柏原工場と生産技術部、開発部、鈴鹿事業所に関しては、私たちが慣れてきたこともあり1年でほぼ30%を達成できる見込みです」(斎藤氏)

 HIT法の対象人数は当初の予定より増え、約830名が対象となった。今後は、さらに活動を本格化させ、対象業務範囲も広げていく計画だ。人材育成やシステム再構築を伴うBPRなどに、HIT法が使われていくことになる。HIT法にかける経営トップの思いや今後の展望は。次回はその辺りについて、八千代工業の加藤社長と辻井副社長に聞いてみよう。