八千代工業では今後、HIT法を活用した生産管理・原価管理などのシステム再構築を予定している。それらは着手したばかりだが、すでにこれまでの改善活動に伴ってシステムの手直しは多数実施されている。

これまで同社の情報システム部門といえば、ユーザーからの修正依頼に対応したりサポートを行ったりすることが中心で、どちらかといえば日陰の存在だった。しかしHIT法の導入を機に、情報システム部は業務改善やBPRのカギを握ることになった。「情報システム部門の社内でのステータスは格段に上がった」と加藤社長は評する。

エキスパートを育成し、海外拠点へも展開

 国内拠点での成果を聞きつけて、海外の拠点やグループ会社からもHIT法を導入したいという声が続々と上がっている。2011年後半からは北米の拠点でもHIT法による改善活動をスタートさせた。先日視察に行った辻井副社長は、「日本人よりアメリカ人の方が抵抗感なく取り組んでいるようだ」と期待を寄せる。

 活動対象を広げるにあたり、HIT法のエキスパートの育成にも取り組んでいる。可視経営協会が実施するHIT法の研修を受講し、指導ができる「ミドル」を中心に12人の資格取得者が誕生した。今後はさらに資格取得を推進していく考えだ。柏原工場と四日市製作所には「HIT推進センター」を設置し、講習会などに活用している。改善活動を一過性のものにするのではなく、継続させることで企業風土として定着することを狙っているのだ。

 最後に加藤社長は改めて、今回の業務改革の狙いを語った。

「HIT法で業務の工数を30%削減できたからといって、そのまま人員を3割減らすわけではありません。ムダな業務が3割減った分、これまでできなかったこと、たとえば営業や購買、広報、研究開発といった機能の強化にリソースを配分していきます。今までの人員でより高いパフォーマンスを発揮できる組織にしていきたいと考えています」

 八千代工業は2020年までのビジョンのなかで、企業体質を改革し、「技術・製品」「事業」「人材」の3分野でトップランナーになることを掲げている。その実現のために、HIT法は重要な役割を果たしているといえるだろう。