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楠木建 ようするにこういうこと

「専業」の国、日本

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第8回】 2012年1月30日
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 日本企業のこれからの方向性を考えたとき、「専業」が一つのキーワードになると考えています。

 専業にこだわっている企業といえば、たとえばエアコンのダイキン工業。もののついでにエアコンを作っているような電機メーカーではもはや太刀打ちできません。コネクターのヒロセ電機も日本を代表する好業績企業です。100万円以上もする高級オーディオを作るアキュフェーズは、大企業ではありませんが、ハイエンド・オーディオのしかもアンプを中心としたエレクトロニクス製品(スピーカーはやらない)に特化して、いまでは世界のトップ・ブランドです。

 規模はずっと大きくなりますが、日本電産もモーター事業への専業特化で成功し、成長を続けています。自動車メーカーはさらに規模が大きいですが、基本的にはどこも専業。これまでの日本の国際競争力の軸足となってきました。

専業度が高い企業が強い日本
ポートフォリオ経営が得意な欧米

 このように、強い日本企業には専業度が高い企業が多いという傾向があるように思います。専業度の高い企業は、変化への対応も実にしぶとい。たとえばカメラの主流はあるときからデジタルカメラに移り変わり、フィルムメーカーは大打撃を受けました。それは自動車業界でいえばクルマが一台も売れなくなるような状況で、倒産してもおかしくない。コダックはこの変化に対応しきれず大変なことになりました。ところが、富士フイルムは、時間こそかかりましたが、変化にうまく対応し逆境を乗り越えようとしています。一意専心ゆえの技術蓄積が転換を可能にしたという成り行きです。

 これに対して、アメリカのGEのようにポートフォリオを最適化することによってうまくやっている企業は日本にあまり多くありません。GEは、かつて家電メーカーでしたが、事業を出したり入れたりして、空間軸の多様性で変化に対応するポートフォリオ経営をやっています。

 戦略としてどちらがいいという話ではありませんが、日本企業の場合、ポートフォリオ経営は得意ではないようです。たとえばソニーはかつて元気なころは「AVの会社」でしたが、ポートフォリオ経営になってからはパッとしません。大体ポートフォリオ経営で求められるセンスは金融のそれです。金融業が得意な国ではポートフォリオ経営もうまい。

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楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


楠木建 ようするにこういうこと

本格経営書として異例のベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』の著者、楠木建一橋大学大学院教授が、日々の出合いや観察からことの本質を見極め、閉塞を打ち破るアイデアを提言。
 

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