人材は「人財」とも言い換えられるように、企業の成長にとって最も大切な経営資源の一つである。しかし、労働人口の減少が象徴するように、人手不足、とりわけ優秀な人材の確保に苦心している企業が増えている。そのような現状を打破するカギとは?

 バブル期を超えたとして、ニュースに取り上げられる機会も増えている有効求人倍率。数字を確認すると、2017年は1月が1.51倍、8月が1.52倍と高止まり傾向にある。この数字、バブル期はおろか高度経済成長末期、1974年以来の高水準だ。

 雇用環境の改善は完全失業率にもあらわれており、17年9月の数字は「2.8%」。求人があっても、職種や勤務地等の条件面で折り合わないことが原因で起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度。完全失業率の3%割れは、働く意思がある人なら誰でも働ける「完全雇用」に近い状態ともいえるのだ。

企業の経営を
人手不足が直撃する

 当然、採用のトレンドは「売り手市場」となる。それを象徴する数字が、大学生の内定辞退率だ。18年春に卒業予定の大学生を対象に行った調査によると、就職活動で内定をもらいながら、1社でも辞退した人の割合は「64.6%」という高い数字だった。売り手場であると同時に、この数字の背後に思うように採用できない企業の苦悩も浮かび上がる。人材不足に直面した企業が例年より多く内定を出した結果、2社以上から内定をもらった学生が増え、辞退率を押し上げたのだ。

株式会社ネオキャリア代表・西澤亮一氏

 中途採用においても、人材確保が困難な状態が続いており、「人手不足」が多くの企業で問題となっている。

 中小企業基盤整備機構が行ったアンケートによると、約74%が「人手不足」と回答し、そのうちの約20%は「人手不足がかなり深刻」としているのだ。その背景を、人材サービス大手、ネオキャリア代表の西澤亮一氏はこう分析する。

「マクロ的な視点では労働力人口の減少が要因です。日本の総人口は長期の減少期に突入していますが、15~64歳の労働力人口を見ても、この8年で約700万人減(右ページグラフ参照)。40年には人口のおよそ30%が65歳以上になると予測され、企業の採用活動はさらに厳しくなるのではないでしょうか」