早朝だったため、産科医院が手配してくれた救急車で提携の大学病院に搬送され、緊急帝王切開で出産。執刀医は当直の若い医師だった。我が子は逆子だった上に、へその緒が首に二重に巻きついていたという。無事産めてよかった。

 だが産後の腹部を初めて見た時は、あまりの醜さに息をのんだ。パンパンに膨らんだ風船の空気が抜けたあとのようにブヨブヨに萎んだお腹に刻まれた長い傷痕。(母親になるって大変だ)と改めて思った。

 その後は、赤ちゃんの世話に追われ、自分のケアは二の次三の次で、あっという間に1年が過ぎた。(赤ちゃんは元気なんだから、傷痕の痛みぐらい我慢しなきゃ)という思いもあった。

上手に縫えばキレイに治せる
肥厚性瘢痕は形成外科へ

 しかし、ママ友の、美しい腹部を見て、考えが変わった。

 同じ時期に帝王切開したというのに、この違いはなんだろう。帝王切開後の傷痕に関する情報を収集し、受診したのは形成外科だった。

 年配の優しそうな医師は、丁寧な診察の後、言った。

「肥厚性瘢痕ですね。切開手術の後に起こる合併症のひとつで、傷跡が幅広くなり赤くケロイド状に盛り上がるのが特徴です。なかでも一番多いのが帝王切開の傷跡です。病名はケロイドの場合もありますが、ほとんどの場合は肥厚性瘢痕です。

 盛り上がりが周囲の正常皮膚へどんどん進んでいくのがケロイドで,傷跡内に収まっているのが肥厚性瘢痕ですが、専門家の間でも区別が難しいケースも多々あります。ともに痛みやかゆみがあり、見た目も悪いことが問題になります。傷跡が恥骨上にあるときに、特に盛り上がった傷跡になりやすいです。

 帝王切開だけでなく卵巣嚢腫の手術跡も、肥厚性瘢痕になる方が多いです。比較的若い女性が手術を受けられるので、長い間苦しまれるようです。

 原因は、縫合がきちんとされてない、止血が不十分なため皮下血腫が生じた、太い筋膜縫合糸を使っているため異物反応を生じているなど、種々あります。加えてケロイドは体質も関係すると言われていますね」