「縫合が下手だったということでしょうか」

 ずばり尋ねる萌さん。

「まあ、下手というか、決して上手ではなかったというのはありますね。日本の場合、帝王切開に限らず、治療後の縫合が重要視されていない傾向があります。心臓手術にしても盲腸の手術にしても、痛々しい傷跡が残っている方が多いですよね。本当は、上手に縫って、きちんとケアをすれば、かなりキレイに治せるんですよ」

 確かに、日本の医療現場には、病気の治療最優先で、術後の縫合はなおざりにされる傾向がある。優秀な外科医でも、「縫合は助手任せなので、もう何十年も皮膚を縫ったことがない」という医師が少なくないらしい。

 だが、患者は長い期間、傷痕と向き合って生きることになる。キレイに治してもらえるかどうかは、決して見過ごせない問題だ。

 08年には、こうした現状を問題視した形成外科医の有志によって「日本創傷外科学会」が設立され、17年には形成外科医以外の外科系医師や開業医にも創傷治療のエキスパートとしての知識と技術を伝授すべく『外科系医師が知っておくべき創傷治療のすべて』(南江堂)が出版された。

 ケガでも病気でも、帝王切開でも、傷痕は痛々しいのが当たり前、と思ったら大間違い。本当はキレイに治せるのだということを、日本人はもっと知るべきだ。

 ◇

 その後萌さんは、肥厚性瘢痕を治すための手術を受け、見違えるほどキレイに治すことができた。

 卓也さんとの“夜の営み”も自然と再開し、心穏やかな日々を送っている。

「赤ちゃんさえ元気なら、傷の痛みぐらい我慢すべきと思っていたのは間違いでした。産婦人科の先生には、傷痕をキレイに治すことにもっとこだわってほしいと思いますし、女性たちには、我慢しなくていいんだよと、伝えたいです」