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安東泰志の真・金融立国論

金融円滑化法の延長は本当に必要か?
場当たり的政策が真の中小企業再生を阻害する

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第17回】 2012年1月13日
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 金融庁は、昨年末、「中小企業金融円滑化法」(以下「円滑化法」)のさらなる延長方針を発表した。同法は、09年12月に、連立を組む国民新党の亀井静香金融相の肝いりで11年3月までの時限立法として導入された後、それが1年延長され、今年3月に期限を迎えることになっていたものである。

 確かに日本企業は、震災や円高の影響を受け、経営環境が悪化している。一方、筆者が連載第1回で述べたように、銀行は資金を必要とする企業に対する社会的責任を十全に果たしているとは言い難い。

 しかし、今回の円滑化法の延長は、そのいずれの問題に対しても解決策になっていないどころか、弊害の方がはるかに大きい。筆者がそう考える理由は、概ね以下の6点であり、本稿ではそれぞれについて簡単に検証してみたい。

①中小企業とそれ以外の企業を分けて対応することの問題
②実態とかけ離れた自己査定基準
③中小企業のモラルハザード
④担保・保証の重視
⑤企業再生に繋がらない円滑化法
⑥産業再編の阻害

中小企業とそれ以外の企業を
分けて対応することの問題

 銀行監督は、銀行が信用リスクをはじめとする各種リスクを、どのように管理しているかをチェックする性格のものであるが、特に信用リスクについては貸出資産の「自己査定」を的確に行ない、倒産確率やその場合の回収可能性に応じて、正しく引当・償却が行われているかが検証される。

 その際にどういう基準で自己査定を行うかは、実態的には金融庁の金融検査マニュアルに細かく規定されている。本来であれば(そして元々そうであったのだが)、その自己査定基準は、企業規模に関係なく適用されるべき性格のものであって、個々の企業の個別事情によって特別扱いが必要なのであれば、それも企業規模に関係なく、個別対応をすればいいのである。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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