応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつある。本連載では、発売直後から立て続けに増刷が決まった元イェール大学助教授・斉藤淳氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から一部抜粋して、「世界のどこでも生きていける頭のよさ」を育てるための英習メソッドを紹介する。

「音:文字」の比率を「7:3」くらいにシフトする

子どもに英語を学ばせるときのポイントとして、小学生の3~4年生くらいになったあたりから、文字やロジックを通じた学習のウエイトを高めていくということが挙げられます。
といっても、主軸が音なのは変わりません。幼児期に「音:文字=9:1」だったのを、徐々に「7:3」とか「6:4」くらいにシフトさせていくイメージです。
まだ小学生の段階では、音に対する感受性が非常に鋭いので、依然として「耳を通じた学習」のほうが効率は高いことは忘れないでください。

一方、学校で教科の学習がはじまる小学生なら、「読む」「書く」への抵抗も少なくなります。本を使いながらじっくりと英文を読んだり、鉛筆を持って英文を書いたりすることで、「聞く」「話す」の力にもプラスの相乗効果をもたらしていくアプローチが必要になります。

高学年あたりで初めて「日本語での理解」を

また、高学年くらいになると、物事を筋道立てて理解する力も身についてきます。その場合には、「かたまり」で英語に触れるだけでなく、日本語での文法解説や発音記号などを含めた、構造的な理解を併用するようにしていきます。
J PREPのコアカリキュラム授業は、必ず日本語を母語とする講師と英語を母語とする講師が1名ずつペアになって行うようにしています。そのため、イマージョンを過信している親御さんからは、「なぜ全員がネイティブ講師でないのですか?」と聞かれることがあります。これに答えるなら、端的に「効率が悪いから」です。

たとえば、日本に長く住んで、日本人の下手な発音にすっかり慣れてしまったネイティブ講師たちは、生徒が「Thank you.」を「サンキュー」と発音していても、「まあ、子どもだし、仕方ないか……」とスルーしてしまうことがあります。その結果、子どもたちがおかしな発音のまま放置されているケースが散見されます。
初心者である子どもたちに、正しい発音を英語で説明するのは至難の業ですし、彼らの学習意欲を傷つけずにそれができるネイティブ講師はそうそういません。J PREPではそうならないように講師研修をしていますが、ほとんどの教室ではそこまで手が回らないでしょうし、あえて直さず楽しむことに重きを置いているところもあるでしょう。