このカップルは、ハワイで挙式をされており、披露宴を改めて日本でされる予定でした。
  ですから、打合せの段階で私もハワイ挙式の様子をビデオで見せていただくことができました。
  とても美しい新婦でしたが、最も印象に残ったのがお父さまの表情でした。
  新婦ご自身、
  「一番感動したのは父とバージンロードを歩いた時です」
  そう繰り返しおっしゃっていて、仲がいい父娘であることが伝わってきました。
  けれども、お父さまとは挙式の前日もゆっくりお話しすることができなかったとのことでした。
  バージンロードを歩くお父さまは涙をこらえているようなお顔をされていました。
  娘に伝えたい想いが溢れるほどあるのにもかかわらず、伝えることができないのではないかと感じられました。 
  そのお父さまの表情が頭に残り、挙式では伝えられなかった想いを披露宴の中で新婦へ伝える時間をおつくりできないか、と思いました。
  「いらないよ。言葉で言わなくても伝わっているだろうから」
  お父さま世代ですと、そんな風に恥ずかしがられる方がほとんどです。
  もしかしたらお断りされるかもしれない、と思いながら、新郎から新婦のお父さまに「嫁ぐ娘へ伝えたい想い」を率直にお手紙に書いていただけないか、と頼んでくださるよう、お願いをしました。
  新郎もなかなかタイミングをつかめずに、1ヵ月ほどしてようやくお父さまにご連絡することができたそうです。
  「お義父さんから彼女へ伝えたい想いをお手紙に書いてもらえませんか?」
  すると、お父さまは、
  「娘に伝えたい想いか……」
  と少し考え、
  「伝えたいことがありすぎて……うまくまとまるかな」
  と、照れくさそうにおっしゃり、それでも前向きにお手紙を書いてくださることになったのでした。