インターネットの登場は様々な形で私たちの「仕事観」「就業観」を変化させました。

 それまでは就職を希望する対象企業1社1社に履歴書を手書きし(多くの企業がJIS規格の履歴書を手書きすることを求めました)、職務経歴書をワープロ打ちし(職務経歴書の本格的な普及は2000年代に入ってからのこと。それまでは外資系企業など多くの転職者を受け入れてきた企業だけが提出を要求しました)、郵送する必要がありました。

 ところが、インターネットによって、その作業はとても簡略化され、実に簡単に自分の経歴情報を企業に飛ばすことができるようになります。人材サービス会社は、いかにして個人から多くのレジュメ情報を集めるかに躍起になり、できるだけ楽チンに経歴情報を入力できるフォームを開発し、できるだけ多くの企業に一挙に送信できる仕組みを開発するようになりました。

 このようにインターネットは、非常に手間のかかった企業に応募する作業を一挙に“楽チン”なものに変化させ、ひいては「就職」を以前よりも“手軽”なものにしてしまったのです。

インターネットの登場がもたらした
「企業序列の崩壊」、そして「逆転の転職」

 インターネットがもたらしたもう1つの変化は、「企業序列の崩壊」です。

 インターネットが登場し多くの新興企業が台頭する以前は、大手企業から中小企業へ転職することはできても、中小企業から大手企業へは転職できないという“常識”がしっかりと根付いていました。新卒者が就職活動をする際にも、鉄鋼業界を志望しているならば、第5位の神戸製鋼所から順番に内定を取付け、そして最終的に1位の新日鉄にのぼりつめていくという行動を辿りました。

 つまり企業規模に従ってその序列が明確に順位づけられていて、その順位を逆行する転職は考えられなかったといえます(ベンチャー企業が大手企業を志望する学生に言われて反論できないコメントの一つが「将来、転職しようと思ったとして、大手企業からベンチャー企業に転職できても、ベンチャー企業から大手企業には転職できませんから」というものでした)。