消費税率引き上げ論議:
2012年の焦点は「経済的影響」よりも「政治的影響」

 1月6日、政府・与党は消費税率を2014年4月に8%に、2015年10月に10%に引き上げるという「社会保障と税の一体改革素案」を決定した。

 同税率の引き上げが2014年4月からであることを踏まえると、2012年はその「経済的影響」ではなく「政治的影響」に焦点が当てられる。

 野田内閣は、3月に消費増税準備法案を国会提出する方針にあるが、現在の議席配分を考慮すると、①同法が参議院を通過するためのハードルはかなり高い、②参議院で否決された場合、衆議院で再可決することも困難、と言える。

 仮に消費増税準備法案が次期通常国会(1月24日召集の方向)で否決されることがあるとしても、2010年代半ばの消費税率引き上げというシナリオ自体は維持するべきであろう。

 むしろ、同法案の否決を受けて衆院解散・総選挙となった方が、消費税率引き上げの議論はしやすくなるのではないか。いずれにせよ、日本は消費税率引き上げの議論を避けられるような財政状況にない。

一般政府の財政収支:
「双子の赤字」から「3つ子の赤字」へ

 財政収支は政府のISバランス(貯蓄投資差額=貯蓄-実物投資)で表すことができる。たとえば、中央政府の財政赤字(=新規財源国債)を考えると、いわゆる建設国債は実物投資(I)が貯蓄(S)を上回る場合に、赤字国債は貯蓄(S)自体がマイナスの場合に当たる。したがって、「財政収支=S-I(ISバランス)」となる。

 中央政府、地方政府、社会保障基金(年金など)を合わせた一般政府のISバランスは、2006年度にはGDP比-0.7%までマイナス幅(つまり赤字幅)が縮小した(図表1参照)。

いよいよ「第1次高齢者ブーム」へ<br />65年の時差を伴ってベビーブームの「裏」が始まる<br />――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 チーフエコノミスト