伊藤忠、社長交代でも岡藤会長がトップから降りない2つの理由岡藤社長(右)は就任から8年で交代を決めたものの、今後もトップであり続ける Photo by Hiroki Matsumoto

「従来のビジネスモデルでは3~5年後には行き詰まる危機感がある。新しい頭で新しいビジネスモデルを考えてもらう」(岡藤正広社長)

 伊藤忠商事は1月18日、社長交代の人事を発表した。CEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)の肩書を新設し、今年4月に鈴木善久専務執行役員が社長COO、岡藤氏は会長CEOとなる。

 鈴木氏は、丹羽宇一郎氏の社長時代に秘書を務め、2003年には当時最年少の40代で役員となった。だが、岡藤氏が社長に就任した翌年、関連会社で航空部品のジャムコへ転出した。通常であれば「片道切符」なのだが、その後、ジャムコ社長として東証1部上場や最高益更新などの実績を挙げ、16年には異例の本社復帰を果たし、新設したフィンテック事業などを行う情報・金融カンパニーのトップとなった。

 一時は社長レースから脱落した鈴木氏が新社長に選ばれた背景には、ジャムコを立て直した手腕もさることながら、理系出身であることも見逃せない。

 鈴木氏は東京大学工学部卒業。三井物産の安永竜夫社長も東大工学部卒だ。今年4月に社長に就任する住友商事の兵頭誠之氏は京都大学大学院工学研究科修了で、大手商社5社のうち3社の社長が工学部出身者となる。なお、新社長3人の前任者はいずれも経済・経営学部と文系出身だ。