それにしても底が見えないユーロ安だ。昨年末、EU首脳会議で「結束」を確認した欧州だが、今年の焦点は「分裂」である。回避するには「ドイツの決断」が問われる。「統一通貨ユーロはドイツの国益」という、あられもない話が表面化する年になるだろう。

ギリシャはユーロという
「毒饅頭」を食べた

【新連載】<br />ギリシャだけが悪いのか <br />護送船団「ユーロ」の盲点やまだ・あつし/1971年朝日新聞社入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。2000年からバンコク特派員。12年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 「欧州一体化」の象徴であるユーロは「戦争のない安定した欧州の創設」という理想を背負っている。小国がひしめく欧州が多数の国家に分かれていることは、効率的ではない。経済合理性に照らせば、欧州統一は歴史の流れかもしれない。問題は統合で得をするのは誰かにある。国家という単位で損得を測れば、「圧倒的に有利なのはドイツ」である。

 ユーロへの加盟で、ギリシャやポルトガルなど周縁国は、つかの間の歓びを味わった。エーゲ海文明のころギリシャにはドラクマという通貨があった。トルコから独立した新生ギリシャは、通貨にドラクマを復活させることで自尊心を回復した。そのドラクマを手放してユーロの一員になった。ギリシャでは政府も国民も、自国の経済に自信がなかったからだ。世界に通用するのは観光とオリーブぐらい。最大の産業は公務員で、日本の地方都市のような国家である。経済は脆弱で、通貨は不安定。ドラクマでは海外の銀行も相手にしてくれない。