おーい、NAMMが来たぞー!

 毎年恒例、世界最大の楽器見本市「The NAMM Show 2018」がついに始まった。アナハイムのコンベンションセンターで、今年は1月25日から28日の4日間に渡って開催される。

 楽器業界全体のトレンドが読め、年間物欲方針を策定する年次イベントとして、毎年ネットウォッチで忙しくなるシーズン。恐らくは現地に行けていない大多数の皆さんと同じように、私もブラウザーにタブを立てまくって注目している。

 今回は2015年のNAMMショーで発表された新型真空管「Nutube」の新展開。ついに本家以外から Nutube 搭載機が登場した。

コルグ、NuTube
コルグとノリタケ伊勢電子が共同開発した新型真空管「Nutube」。ノリタケ伊勢電子の蛍光表示板の技術を使って、低消費電力、低発熱、長寿命と、これまでの真空管の欠点を克服した

本物の真空管が載ったIbanez「Nu TubeScreamer」

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
製品サイトより

 コンパクトエフェクターの王道にしてオーバードライブのメルクマール、単に「緑のアレ」と略されるくらいの基本エフェクター、あのチューブスクリーマーが「Nu TubeScreamer」となってやって来た。

 国内販売店が付けた価格は2万7648円。ちょっとお高い。しかも当初、発売は1月17日とアナウンスされていたが、2018年夏以降に延期された。残念。

 しかし、このエフェクターには、新しいのが出たら試してやろうと待ち構えている人たちが大勢いる。チューブスクリーマーとはそういうエフェクターである。「TS系」と括られ、派生品、類似品、魔改造を施された少々インチキ臭いものまで含めて、無数と言っていいバリエーションが存在する。

 で、Reverbのような楽器サイトには、すでにデモ動画が上がっていた。

 さまざまな解釈で、さまざまに使えるエフェクターだが、スティーヴィー・レイ・ヴォーン以降、真空管アンプにミッドレンジブースターとして使う解釈が広まり、以降、定番としての地位を確立。今は本物の真空管アンプが1万円代から買えるわけで、チューブスクリーマー大活躍の時代である。

 そのチューブをスクリームさせる箱自身にチューブが載ったのが「Nu TubeScreamer」。まずそこが新しい。そして今までと違うのは、9VのバッテリーやDCアダプターに加えて、18Vアダプターも使えること。これでダイナミックレンジが拡大すれば、よりニュアンスが豊富になる。「MIX」という新しいノブも増えた。これはオーバードライブと生音のバランスを調整するもの。おそらくブーストした際の歪み感と、ピッキングニュアンスの調整ができるはず。

 大期待である。早く夏になるといい。

NuPowerとは何ぞやのVOX「MVX150シリーズ」

 本家も抜かることはない。去年のNAMMに参考出品されていたNutube搭載のギターアンプ「MVX150」が、そのまんま発表された。キャビネット一体型の「MVX150C1」と、ヘッドアンプ単体の「MVX150H」の2種。

 MVX150C1は、UKセレッションの特製12インチ4Ωユニット「Redback」1発をマウント。ヘッドアンプのMVX150Hには、同じくRedback1発をマウントした新型キャビネット「BC112-150」が用意される。価格はMVX150C1が16万2000円、MVX150Hが11万8800円、BC112-150が5万4000円。

 アンプの仕様は共通で、出力は140W RMS@4Ω、70W RMS@8Ω、35W RMS@16Ωと発表されている。

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
左が「MVX150C1」、右が「MVX150H」と合わせて発売された新型キャビネット「BC112-150」

 Nutube搭載機なので出力の割には軽い。MV150Hは7.1kg、MVX150C1が19.4kg。キャビのBC112-150は15.4kgだから、全体として軽く済ませたいなら、MVX150C1の方が3kgほど軽い。ヘッドアンプだけ持って行けばいいなら、MV150Hは片手楽々コースだ。

 アンプは2チャンネル。メーカーいわくこれで「ピュア・クリーンからモダン・ハイゲインまでカバーする」そうだ。

 チャンネル1は、ゲインとワンノブ式のトーンとボリューム。それにCLEANとCRUNCHの切り替え、 そしてBRIGHT、FATスイッチが付く。チャンネル2は、ゲインと3バンドEQとボリューム、それにRHYTHMとLEADゲイン切り替え、BRIGHT、FAT、MID-SHIFTのスイッチ。マスターコントロールにはPRESENCEとRESONANCEがあり、超低域と超高域の調整が可能。デジタルリバーブも内蔵している。

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
MVX150H(上)のフロントパネルと、MVX150C1(下)のトップパネル。操作系も共通
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
MVX150H(上)とMVX150C1(下)のリアパネル。レイアウトが逆になるだけで端子や操作系は共通

 リアパネルに回ると、さすがVOXの設計者は凝っているなあと思う。Nutubeのバイアス調整ノブが付いているのだ、しかもチャンネルごとに。チャンネルはフットスイッチで切り替えられるから、バイアス設定の違うアンプを弾き分けられるのだ。

 スピーカーアウトの「WET ONLY」端子もユニークだ。これはエフェクトループを通った音や、内蔵リバーブの残響成分のみを出力するスピーカー端子。つまり、ここにキャビネットを接続すると、2チャンネル出力のアンプになる。もしかして、そのためにわざわざ独立したパワーアンプを入れちゃったのか? ちなみにセンド/リターンのエフェクトループは、パラレル/シリーズの切り替えスイッチ付き。

 最近のチューブアンプらしく、パワー・レべル・コントロールという、音圧感を維持しつつ、音量だけ落とせる仕組もある。これはフル、1/2、1/5、1/30、1/150、ミュートの6段階。マイキングやキャビネットの特性も入れ込んだ EMULATED LINE OUT付きなので、宅録にも使える。機能面では至れり尽くせりで完璧だ。

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた

 しかしこの製品のニュースは「NuPower」と称する技術と、それを盛り込んだ新型のパワーアンプが搭載されていることに尽きる。

 メーカーのリリースによると「一般的な真空管アンプのパワー部と同様にNutubeをプッシュプルで使用し、さらにスピーカーの動的な特性を読み取り前段の回路にフィードバック」しているらしい。

 どんな仕組みかは謎に満ちているが、Nutube単体ではパワー管として使えないはずなので、ソリッドステート回路との組み合わせだろう。去年発売されたMV50のCleanみたいな、あの感じを想像すればいいのだろうか? サグ感やパワー感の歪んだニュアンスがリアルで、へたくそな私が弾いても気持ちのいいアンプだった。チャンスがあれば、これはVOXの開発部に取材をしてみたい。

 MVX150シリーズとBC112-150の発売は4月下旬予定。

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
MVX150シリーズ用に開発されたスピーカーキャビネットBC112-150のフロント(上)とリア(下)

ブティックとハイゲイン追加のVOX「MV50シリーズ」

 そして従来型Nutube搭載ギターアンプ「MV50」シリーズのラインナップも拡充。「Boutique」と「High Gain」が追加された。ますますamPlugっぽくなってきたぞ。

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
「MV50 Boutique」のフロントパネル(上)とリアパネル(下)
21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた
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「MV50 High Gain」のフロントパネル(上)とリアパネル(下)

 ほかのMV50シリーズと同様、フロントのコントローラーはシンプルな3ノブスタイル。リアに回ると、通常はインピーダンス切り替えスイッチの部分が、High Gainは「MID CTRL」となっている。これで中音域のブースト/カットをするらしい。そのほかの仕様は従来のMV50シリーズと同じ。

 パッと見た感じ、シルバーパネルのHigh Gainは、MESA BoogieのDual Rectifierあたりがモデルだろう。ウッドパネルのBoutiqueは、まあ、なんというかブティックアンプなのだが、メーカーのリリースに「暖かみのあるクリーンからリードに最適なオーバードライブまでカバーし、ピッキングによる繊細なニュアンスもパーフェクトに表現」とヒントが書かれているので、ダンブル系と呼ばれる方面と想像できる。

 しかし音は弾いてみなければわからない。どちらも発売は4月下旬予定。期待して待とう!

21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた

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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ