日本におけるワインの国別輸入先でトップシェアとなり、安旨ワインとしての評価も定着し、親しみのあるワインとして日常のテーブルでも楽しまれている「チリワイン」。

 一方で「面白みのない低コストワイン」、「カベルネ・ソーヴィニヨンの他になにかあるの?」、「そもそもチリという国もよく知らないので話題が広がらない」という声もある。そう、ワインの裏側にある物語に興味・関心もなく、本当に浸透しているとは言い難い状況ではある。

 もうそのイメージでチリワインを語るべきではない、と声を強く、大にして言おう。かの地では実に愉快で痛快、かつ真摯なムーブメントが進み、良質な環境のもとでワイン造りが行われ、面白いワイン、上質なワインが続出しているのだ。今回、3週間、チリに滞在し、20以上のワイナリーを訪問。ここで出会ったワイナリー、そしてワインは、間違って定着しつつあるチリワインのイメージを覆す発見の連続だった。

 そこで、今どきのチリワインの面白さ、素晴らしさについて、「オーガニック」「クールクライメイト」「セパージュ」「ツーリズム」という4つのキーワードをもとにその発見をレポートしていく。いや、レポートしていく…という難しくおカタいものではない。そう、旅するワイン。難しい概論やスペック、業界内の話題ではない。キーワードはワイン的なおまとめだけれど、ワインを通じて、そのワインを生む、チリという国の文化や風土、そして人々の情熱と笑顔、その物語を楽しんでいただきたい。

オーガニック
Keyword of Chilean wine 1 Organic

のんびり過ごしている羊だがこれも仕事なのだ(『ヴェラモンテ』にて)

先進的であり、原点回帰でもある
恵まれた風土を生かすための素直な答え

 チリワイン=安価。その一面的なイメージからすると、「大量生産」であったり「粗雑な環境」というようなネガティブなワードが頭に浮かぶけれど、こうやってキーワードとして最初にあげているのだから、もちろん、実情は違う。むしろ、チリはオーガニックというキーワードにおいて、素晴らしい取り組みが広がっている希望の地でもあるんじゃないかと感じたのだ。

 それを支えるのは、「恵まれたテロワールを生かしたい」という意識。チリにはいにしえから守られてきた土壌があり、燦燦と輝く夏の強い太陽と、毎朝夕に吹く美しく冷涼な風、適切な季節にのみ、適切な量が降りそそぐ雨がある。

 まだ手つかずの都市化されていない谷や丘が広がり、そこには古代から生き続けてきた植物と、のんびりと、しかし生存競争と食物連鎖の中に自然に身を置く動物たちがいる。栽培されるブドウ、ワイナリーはその中にある。であればオーガニックという手法は、無理に取り組むものでもなく、あたりまえの選択。