2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。第15回は、みずほ総合研究所の高田 創・チーフエコノミスト。

ユーロ安をきっかけに「通貨戦争」が起き、<br />円高が進行する可能性も<br />――高田 創・みずほ総合研究所チーフエコノミストたかた はじめ/みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト。1958年生まれ。82年3月東京大学卒。日本興業銀行、みずほ証券チーフストラテジストなどを経て、11年より現職。著書に『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など。

①欧州中心の債務危機、より強まる

 欧州各国格下げに伴う国債市場不安(債務危機)や、金融システム不安が一段と強まる。

②ユーロ安をきっかけとした
「通貨戦争」、円高の強まり

 ユーロ危機を背景に、ユーロの通貨安の強まりと円高の進行。

③グローバルな社会不安の高まり

 世界各国でバランスシート調整にからむ期待と現実の乖離で、社会的な不満の高まりに。

④グローバル規模での政権交代

 バランスシート調整にからむ期待と現実の乖離に、2012年の主要国選挙が重なり、各国で政権交代が相次ぎ、ポピュリスムが高まる。2011年のPIIGS諸国の政権交代は、2012年の変動の前哨戦。

⑤各国でのフリクション高まりで
「新重商主義」に

 日米欧における信用収縮のなか、経常収支黒字確保の観点から世界での生き残りをかけた市場確保が起きるのに伴い、各国でのフリクションが高まる「新重商主義」の様相に。