不祥事を起こすモノ作り現場の「危険な兆候」はこれだ写真はイメージです

2017年は、名だたるモノ作り企業の品質不正が相次いだ年だった。高品質の代名詞でもあった日本製品の信用をゆるがす事態と言っても大げさではないだろう。なぜ、このようなことが頻発するのか。製造業を中心とした大手企業の人材・組織開発のコンサルティングを手掛けるセルムの加島禎二氏が「不祥事を早期発見・予防する処方箋」を提案する。

日本の「モノ作り」の現場で何が起きている?

 不祥事が起きた際、メディアなどでは「現場は真面目で優秀なのに、経営側が現場の状況を配慮せず、きついプレッシャーをかけて現場を追い詰めたせいだろう」という論調が多く見られる。だが、組織と人材開発に特化したコンサルタントとして数多くの企業現場を見てきた立場から言わせてもらえば、「そんな単純な捉え方では済まされない」というのが本音だ。

 報道によれば、スタート時期は定かではないものの、長年にわたって「現場の論理」といわれるやり方が存在し、問題視されることなく継続されてきたという。それが、ある日突然、問題として明るみに出たというなら、特定の個人に起因する問題ではなく、企業の風土、あるいは仕組みの問題と捉えるのが適切ではないだろうか。

 これは想像でしかないが、おそらく品質不正が始まった段階では、それなりの事情があったのだろう。同じことを続けるなかで「これはおかしい」と気づく人も機会もあったはずだ。

 にもかかわらず、「ずっとこうやってきたし、今さら変えるのは面倒だ」「やり方を変える苦労に見合うメリットがない」、さらには「今さら問題を明るみに出すことや、やり方を変えることのリスクのほうが大きい」という論理が勝ってしまったのではないか。場合によっては、上司や先輩が長年やってきたことは「正しいかどうかを考える対象ではない」というメンタルになっていたのかもしれない。

 勘違いしてほしくないが、筆者は、経営でなく現場が悪いと言っているのではない。問題の根底には、日本の企業にありがちな「ムラ社会の論理」がある。つまり、自分たちの(=職場の)人間関係や業務しか見ていない狭い世界では、社会全体の規範よりも、職場独自のやり方やルールが優先されてしまう。残念ながら、日本企業には、そんな環境を醸成しがちな傾向がある。ここに問題があると言いたいのだ。

「ムラ社会化」の危険な兆候

 筆者は、企業の風土改革などのお手伝いをさせていただく機会も多い。その際、「組織風土の健全性にとって危険な兆候」と捉えている事象がある。その代表的なものを紹介したい。