すでに市場は織り込み済みだった?
S&Pによるユーロ圏9ヵ国の一斉格下げ

 1月13日の金曜日、有力格付け会社である米S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は、ユーロ圏9ヵ国の格付けを引き下げた。

 その中でも最も注目されるのは、イタリアを2段階引き下げたことに加えて、フランスやオーストリアを最上級格付け(AAA)から一段階引き下げたことだ。これらの格下げによって、今後、ユーロ圏の信用不安問題はさらに深刻化する可能性が高まった。

 もう1つ注目される点は、最近、世界の主要国の格付けが軒並み引き下げられていることだ。S&P社による最上級格付けは、ドイツやオランダなど14の国・地域を残すのみとなった。

 主要国の格下げの背景には、主要国自身が、世界的な不動産バブル崩壊による民間部門のツケを背負ったことがある。国が債務を肩代わりして、企業を救済するしか方法がなかったのだが、救済措置による債務残高の急増が国の信用状況を悪化させているのである。

 ただ、今回のユーロ圏諸国の格下げは、以前から予想されていたため、金融市場ではすでに織り込み済みで、市場に与える影響は限定的であった。というよりも、格下げが発表された後には、当該国の国債の価格が上昇し、新規の入札が順調に消化される結果となった。

 金融市場の多くの投資家は、格付け会社の先回りをして、事前に当該国債の保有額を減らすなどの行動をとっていたことが考えられる。

 むしろ、ヘッジファンドなどの投機筋は、格下げを1つの収益機会としてうまく利用していると言えるだろう。機に敏い投機筋から見ると、格付け会社の足もとを見て荒稼ぎをするチャンスに見えるのかも知れない。

 サブプライム問題の発生以降、格付け会社に対する投資家の認識はやや低下しており、今後、投資家からの信任を取り戻すことが重要になるだろう。