アメリカの1月から2月にかけては、テレビが活躍する季節です。音楽や映画の賞、そしてスポーツイベントなど、日曜日ごとにさまざまなイベントが目白押しです。1月28日は音楽の祭典、グラミー賞が米CBSでニューヨークから中継されました。

 アメリカではケーブルでのテレビ視聴がまだまだ多いのですが、簡単な室内アンテナとテレビがあれば、主要ネットワークのテレビ局の番組は見ることができます。先日コードカットの話を書きましたが、筆者の家でもCBSで放送されるグラミー賞の生中継は楽しむことができました。

 今年はなんといっても、ブルーノ・マーズが主要部門を独占し、今最も勢いのある音を奏でているのだなという印象が強く残りました。

 それにしても、ノミネートされたアーティストの中にも、本当に白人が少ない印象。純粋に良い音楽を評価するという現場ではありながら、多様性に対して米国内で逆行する動きに支持が集まっている背景も関係していたのかもしれません。

AppleのCMはアニ文字活用

 こうした米国中の注目が集まるイベントに対して、さまざまな企業が特別なテレビCMを用意します。そうした普段は見られないCMもまた、楽しみの一つになっています。

 すべてのCMをチェックしたわけではありませんが、AppleとGoogleのコマーシャルは印象的だったのでご紹介しておきましょう。両社とも最新スマートフォンのコマーシャルを扱っていました。

 AppleはiPhone X。春にも配信される予定のiOS 11.3でキャラクターが増えることが公表されたiPhone Xならではの機能、「アニ文字」を全編で活用したCMです。

 宇宙人の絵文字にChildish Gambinoの「Redbone」を1分間リップシンクロで歌わせ、その背景に他のアニ文字のキャラクターがコーラスを入れるような構成です。

 この背景は、Childish Gambinoのアルバム「Awaken, My Love!」のジャケットと同じデザインになっていました。このパターンは今後も展開していくことができそうですね。ぜひ日本でも、顔がドンとあるジャケットのバージョンが制作されて欲しいすね。

 このアイディアは、必ずしもCMの世界の話ではありません。もしiPhone Xを持っていたら、アニ文字のビデオを撮影し、その最中に表情豊かに歌ったり喋ったりしたものを、誰かに送信するだけでなく、自分が作るビデオに取り込めば良いのです。

 Appleはビデオを簡単に録画できる「Clips」というアプリを用意しており、InstagramやSnapchatで共有するビデオのように、簡単にビデオクリップを撮りため、そこに絵文字やステッカーを貼り付けたり、喋っている内容を文字の字幕に変換する機能が用意されています。

 TrueDepthカメラを搭載したiPhoneやiPadが今後もっと増えれば、おそらくこのClipsにもアニ文字録画機能が搭載されるんじゃないか、と推測しています。

Googleはアジア最高齢DJをCMに抜擢

 一方のGoogleはPixel 2のCM。東京育ちの筆者からするとどことなく見覚えのある風景だなーと思っていたら、完全にロケ地は東京です。そうかと思っていたら、画面に大きく「DJ スミロック」とカタカナが現れたではありませんか(https://www.ispot.tv/ad/wJkA/google-pixel-2-a-deeper-story)。

 Googleが放映したCM「Deeper Story」の説明には、次のようにあります。

 「Google Pixel 2のレンズを通して、私たちはスミコさんの、83歳の一般的な生活と、週末の世界最高齢DJとしての活躍を発見しました」

 CMで使われた写真は、おそらくPixel 2で撮影されたもので、レンズに問いかけようというメッセージが流れます。

 岩室純子さんは、19歳の時にOLと家業の「餃子荘ムロ」の二足のわらじを履くようになり、77歳からDJスクールに通ってデビューしており、今回グラミー賞のGoogleのコマーシャルに抜擢されました。

 2017年4月にアメリカのMashableで採り上げられましたが、CMが流れてから、記事への注目度のグラフも急上昇しています(https://mashable.com/2017/04/12/japanese-82-year-old-dj/#dHVZQXpGzmqZ)。

多様性とテクノロジーによる可能性の拡大
でも実際の日本の現状はどう?

 Google Pixel 2のCMは、日本人が登場していたという内容からひいき目に見ても、グラミー賞が意識していた多様性、長年の功績によるコミュニティへの貢献、自分らしさといったテーマをうまく表現していたといえます。

 Appleは昨年のWWDC 2017で、おそらくDJスミロックさんと同い年で最高齢参加者である若宮正子さんを基調講演の冒頭で紹介しました。

 多様性や世代間格差の問題に対処している姿勢を示す上で象徴的な存在としてシリコンバレー企業が頼っている側面はありますが、日本の80代の活躍は「バイタリティあふれる年長者が活躍している日本」というイメージを強めているようにも感じました。

 では、日本の国内では実際はどうでしょうか。テクノロジーがよりポジティブに、長い人生をサポートする存在として評価・昇華されていくには、もう少し時間がかかるようにも思います。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

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Twitterアカウント @taromatsumura