守屋武昌・前防衛事務次官らによる防衛装備品汚職事件に実刑判決が出た。だが、「第二のロッキード事件」とまで騒がれた疑獄事件は、国防族議員など政界の関与の追及まで至ることなく単なる官・業のゴルフ接待汚職に矮小化されつつある。同様の事件を再び起こさないためには、何を教訓とすべきなのか。

 11月5日、防衛装備品をめぐる汚職事件で収賄と議院証言法違反の罪に問われていた前防衛事務次官・守屋武昌被告に実刑判決が言い渡された。
「被告を懲役2年6月に処す。1250万1056円を追徴する」

 裁判長が告げた瞬間、守屋の上体はぐらりと揺れた。

「公務員の不祥事が繰り返されるなかで、防衛行政の中枢にいた被告が、特定の業者と長い癒着関係にあったことは、看過しえない」
「官僚組織を上り詰めた者の行為として、その規範意識の乏しさには驚きを禁じえない」
 判決要旨には厳しい言葉が並んでいた。守屋は、身じろぎもせずに聞き入っていたが、「職を曲げ、特定企業に便宜を図ったことはない」と、即日控訴した。

 「温情ある判決」を期待していたのだろう。公判中は「申し開きのない、いたたまれない気持ち」と謝り続け、約7600万円の退職金は借金をして全額返還。現在は、鬱病を患った妻の看病をしながらの年金生活だと、苦しい経済事情をつまびらかにもしている。

 そこには、かつて「防衛省の天皇」とまで呼ばれた大物官僚の姿はなかった。

非エリートの守屋が
出世していった構図

 守屋と妻、防衛商社「山田洋行」の元専務・宮崎元伸被告が、贈収賄容疑で逮捕されたのは、2007年11月のことだ。守屋夫妻が宮崎側から受けていた接待総額は2500万円にも及んでいた。賄賂の中身は、飲食、ゴルフ、金品と古典的であり、事件自体の構図もきわめて古典的な〈官と業との癒着〉だった。

 判決では、利益提供の見返りとして、防衛装備品の選定や導入過程で、守屋が宮崎側の山田洋行や彼が06年に設立した防衛商社「日本ミライズ」に便宜を図ったことが認められている。

 たとえば、C―X(次期輸送機)搭載用エンジン。山田洋行が代理店契約をしていた米GE(ゼネラル・エレクトリック)の製品に決定するのだが、宮崎が山田洋行の経営陣と対立して独立すると、ミライズでの商権を主張し始める。

 すると守屋は、経理装備局航空機課長に「ミライズと随意契約するに決まっているだろう」と、指示を出したという。