[ニューヨーク 29日 ロイター] - ブラジルの控訴裁判所が24日、ルラ元大統領を有罪とする一審判断を支持する判決を下し、今年10月の大統領選に同氏が出馬する可能性が薄れたことで、市場の関心は、同じく大衆主義的な候補者がリードしているメキシコの大統領選へと移った。

ブラジル株は過去2年間、テメル大統領による市場寄りの経済改革を好感して上昇し、中南米株全体の力強い伸びを引っ張ってきた。しかしこのところ、大統領選の世論調査でルラ氏が支持率トップとなり、投資家の楽観論を脅かしていた。

ルラ氏は選挙戦を続けると表明しているが、今回の判決で出馬はほぼ不可能となった。ブラジルの法律は、控訴審で有罪判決が支持された候補の出馬を禁じている。

対照的に、7月のメキシコ大統領選では、「AMLO」の愛称で知られる急進左派のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏がリードを確実にしつつある。29日の世論調査では、ロペス・オブラドール氏の支持率が32%と、保守派候補のリカルド・アナヤ氏の26%に差を付けた。

メキシコをめぐっては、米国が北米自由貿易協定(NAFTA)を離脱する懸念も残る。

フィデリティ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ウィル・プルエット氏は、ルラ氏の有罪判決により、市場寄りの政策を踏襲しそうな中道候補が大統領選で勝利する可能性が高まったのに加え、石油のペトロブラス<PETR4.SA>など国営企業の業績が好転していると指摘。ブラジル株が他市場をアウトパフォームし続けると予想している。

プルエット氏によると、ブラジルの金融株や消費関連株は割安だが、メキシコでは割安株がほとんど見当たらない。メキシコ株について同氏は「NAFTAとAMLOという2つの潜在的ショックを抱えるため、今のところリスクと利益のバランスが良くないと思っている」という。

ロペス・オブラドール氏は、2013─14年の石油産業改革の際に外国投資家と結んだ石油契約の見直しを約束しており、この点も投資家にとって不安要因だ。

SMBC日興証券の新興国市場アナリスト、ロジャー・ホーン氏は「(国営石油会社)ペメックスとの契約や、他のインフラ絡みの契約をすべて仕切り直しにするようなら、物事が止まってしまう」とし、外国からの投資が断たれるとの懸念を示した。

中南米株<.MILA00000PUS>は2016年初めから75%も上昇した。この間、メキシコ株はブラジル株をアンダーパフォームしており、T・ロウ・プライスのファンドマネジャー、ベレナ・ワクニツ氏は、ロペス・オブラドール大統領の誕生と米国のNAFTA離脱への警戒感が今後数カ月間、メキシコ株を圧迫し続けるとの見通しを示した。

もっとも、ロペス・オブラドール氏はメキシコ市市長として現実主義的な政治を行った実績がある、との指摘もある。同氏は高齢者や若者、農民向けの支出を増やして格差是正に取り組むと約束しているが、極左的な政策は掲げていない。

また、退任するペニャニエト大統領が遂行したエネルギー、銀行、税制、競争政策などの構造改革は、どの政党が勝っても踏襲されるとの見方もある。

(Christian Plumb記者)