[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米金融市場は市中金利の指標となる10年物米国債利回りが3年超ぶりの高水準に上昇し、公益や不動産といった金利動向に敏感なセクターの株式に売り圧力が強まっている。

しかし市場関係者によると、利回りは普通の水準に戻りつつあるだけで、今のところ9年にわたる米株強気相場の腰を折ったり、米景気を減速させる恐れはなさそうだ。

資金運用担当者によると、借り入れコストの上昇が住宅市場や消費支出を鈍化させ、米景気に悪影響を与え始めるのは10年物米国債利回りが3%台に乗せてからで、足元からこの水準までなお30ベーシスポイント(bp)程度の開きがある。

ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャーのマーガレット・パテル氏は「金利がもう少し上がらないと、株式市場に持続的な悪影響が生じることはない。世界的に成長が上向いているほか、米国では減税が実施され、米株式市場の環境は1、2年前に比べて大幅に良くなっている」と述べた。

このためパテル氏は高利回りのジャンク債を売る一方で、ハイテクやヘルスケアなどの成長株を買っており、債券への資金配分比率はこの数年で最低となっている。

30日の米株式市場は金利上昇への警戒感などから下落。昨年9月初めに2.06%だった10年物米国債利回りは2.7%台となった。

しかし市場関係者によると、国債利回りは各国中銀が2008年の世界金融危機対応で実施した大規模な金融緩和で何年も押し下げられており、最近の上昇でやっと通常の水準に近づいているだけだという。

BMO・グローバル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マイク・ダウダル氏は「利回りは本来の水準に戻りつつあるが、歴史的基準で見ればまだ低い」と述べ、米景気拡大が加速する今の環境では、株式よりも国債が魅力的と思えるほどの水準ではないとした。

<大転換の兆しなし>

米株式市場はこれまで何度も米国債利回りの急上昇をこなし、上昇基調を維持してきた。10年物米国債利回りは2016年11月初頭には1.7%だったが、トランプ米大統領の政策でインフレが高まるとの見通しが高まり、17年3月には2.5%に上昇した。一方、世界的な景気回復や米減税への期待から、S&P総合500種は17年に20%近く上昇した。

全体で見ると、利回りが上昇したにもかかわらず株式から債券への資金転換は起きていない。リッパーの調査によると、株式と債券の両方に投資するバランス型ミューチュアルファンドは昨年末時点の株式への資金配分が55.4%で、2014年から2%程度低下しただけだ。

株価が最も大きな影響を受けたのは金利動向に敏感に反応するセクター。公益株に連動する「SPDR・ユーティリティー・セレクト・ファンド」<XLU.P>は年初来で4.2%低下し、不動産株に連動する「リアルエステート・セレクト・SPDR」<XLRE.P>は4.1%下落。この間にS&P500は5.8%上昇した。

フェデレーテッド・クローバー・スモール・バリュー・ファンドのポートフォリオマネジャー、マーチン・ヤルセボウスキ氏は、10年物米国債利回りが年末までに3%に上がっても米株式市場は上昇を続けるとみており、金利上昇や規制緩和が追い風となる金融株を買い増しているという。

(David Randall記者)