決して小さな差ではない
東大「秋入学」の実現性

 東京大学が、5年後の実施を目処に、現在春(4月上旬)の入学時期を、世界の一流大学と同様に秋に移行したいとする考えを発表した。

 今のところ、入試はこれまで通り春に行ない、秋に入学・卒業となるようだ。卒業後に企業や官庁に就職する通常のコースを想定すると、高校を卒業してから早くて4年半、卒業翌年の春に就職する場合には5年かかることになる。

 4年と、4年半ないし5年。時間のコストを考えると、決して小さな差ではない。東京大学だけが秋入学に移行するとなると、他大学との競争関係に変化が生じる可能性があるが、東京大学は国立の他大学、慶応大、早稲田大などに協議を呼びかけており、「単独では実施しない」とも言っていて、慎重だ。就職の受け皿となる官庁・企業にも、対応の検討を呼びかけるとしている。

 4月を年度始め、3月を年度終わりとする日本流の制度に対応して人材を供給してきた東京大学が、むしろ自らに都合よく見える現在の仕組みを変えようとする主な動機は、海外の大学との競争だ。

 特に、アジア地域の学力優秀な学生の獲得が狙いだろう。東京大学が研究の拠点として、さらに人材供給源としてのブランド価値を保つには、国際的な競争ポジションの確保が重要であり、そのためには、国際レベルで優秀な学生を集める必要があり、その供給源は日本の学生だけでは明らかに不足だ。外国人の学生にとって便利な制度変更を行なうことは、当然の大学経営判断だろう。

 他大学は追随するだろうか。

 この点を考えるには、学生の就職に対する影響を考えなければならないが、企業はおそらく秋入社の新卒者を受け入れるなど、東京大学の卒業生が不利にならないような対応を行なうだろう。