日銀次期総裁は誰になっても舵取りが難しい理由

市場予想では
黒田総裁の続投が最有力

 皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。

 さて、日銀の黒田東彦総裁の5年間の任期が今年4月に迫り、市場では日銀総裁の後任人事に関心が集まっています。そこで、今回は「次期日銀総裁人事」に焦点を当てたいと思います。

 先月行われたエコノミスト予想調査(金融情報会社ブルームバーグ)によれば、黒田東彦総裁の続投が本命視されています。黒田総裁が、2位の中曽宏・日銀副総裁の4倍近いスコアを獲得して断トツの1位となり、他の候補を大きく引き離しています。3位以下は、本田悦郎・駐スイス大使、伊藤隆敏・米コロンビア大学教授、雨宮正佳・日銀理事などの候補が挙がっています。

本命の黒田総裁は
異次元の金融緩和で活躍

 まずは、最有力候補とされる黒田総裁の5年間の実績を振り返ってみましょう。

 黒田総裁といえば、過去にない「異次元の金融緩和」を行うなど、市場にサプライズを与えて注目を集めたことが記憶に新しいですね。市場の予想を上回る政策変更を行い、“期待の形成”に働きかける黒田総裁の手法は、俗に「黒田バズーカ砲」と呼ばれました。

 黒田総裁が実施した「異次元の金融緩和」とは、日本銀行が2013年4月の金融政策決定会合を機に始まった「量的・質的金融緩和」以降の金融政策のことです。消費者物価の上昇率(前年比)2%という「物価目標」を2年程度の期間で実現することを掲げ、マネタリーベース(日銀が世の中に直接的に供給するお金)や長期国債・上場投資信託(ETF)等の保有額を2倍に拡大するなど、量・質ともに従来とは次元の違う金融緩和を行いました。

 その後も黒田総裁は、物価の基調が弱いと見ると、14年10月に追加金融緩和策として、マネタリーベースの増加や資産買入れ額を拡大したほか、16年2月には、マイナス金利を導入し、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を実施しました。

 ところが、この状況は、16年9月の金融政策決定会合で一変します。