スカイマーク再建に片道切符で乗り込む銀行マンを導いた「奇縁」Photo by Yoshihisa Wada

民事再生法の再生開始から2年。そして終結から1年半。スカイマークが新たな成長ステージに入り、再上場も視野に入ってきた。この2年間、スカイマークは何を変えようとしてきたのか。再生開始と同時に経営トップに就任して再建をリードしてきた市江正彦社長が語る。

定時運航率でJALとANAを抜く

 安全と定時運航の維持は、航空会社への信頼の礎となるものだ。2018年1月18日、国土交通省から 2017年4月~9月の定時運航率と欠航率が公表された。スカイマークは2017年上半期(4-9月)の定時運航率(出発予定時刻以降15分以内に出発した便数の割合)が92.59%となり、国内航空会社11社中1位になった。欠航率(運航予定便数に対する欠航便の割合)も0.4%となり、「もっとも欠航しにくい航空会社」としても1位を獲得した。

 16年3月に民事再生手続きが終結して約1年半。また同年10月に「定時性向上対策本部」を設けてから1年。定時性の向上は、乗務員や整備士、地上旅客担当者、運航管理者、グランドハンドリング担当者など、すべての関係者の力が一つにまとった総合力そのものだ。それぞれがしっかりと仕事をし、さらに連絡を密にとり、それを可能にする風通しのよい社風が実現していなければ定時性は向上しない。チームプレー、組織力が如実に現れる。

 定時運運航率が92%を超え、上半期で日本一になったという事実は、スカイマークの再建が、新たな成長段階へと変わったことを端的に示している。

 用意した座席に対して何人のお客さまにご搭乗いただいたかを示す搭乗率も、民事再生を申し立てた2015年1月には55.1%にまで落ち込んでしまったが、直近ではコンスタントに80%台後半をキープできるようになった。

 座席はJALやANAと同じサイズ、同じ前後間隔だが料金は2社よりも安く、定時運航率が向上して利用しやすくなった。低料金だが、座席は狭く定時運航率も低いLCCとも違う。「大手でもLCCでもない」という、航空業界における第3極としてのスカイマークの存在価値が、利用者に再び支持いただけるようになってきたと思っている。

 私は、スカイマークの民事再生計画が確定した直後の15年9月に社長に就任した。前任は、日本政策投資銀行の取締役常務執行役員だった。新生スカイマークには、企業再生投資ファンドのインテグラルとANAホールディングス、そして三井住友銀行と日本政策投資銀行が組成したファンドUDSが計180億円を出資した。

 50.1%を出資したインテグラルの佐山展生代表がスカイマークの会長に就任し、私が社長に指名された。また16.5%を出資したANAホールディングスからは整備経験豊富な2人が取締役に就いた。

 投資ファンドの代表が会長で、銀行出身者が社長。常識的には「ハゲタカ」「コストカッター」とイメージされてもおかしくはない。スカイマークの社員たちにも同様の思いがどこかにあったかもしれないが、民事再生法申請以来、資金スポンサーとして支援してきた佐山代表は、「レイオフは絶対に行わず、雇用を守る」と全国の支店や空港をまさに飛び回って社員に直に伝え続けた。そして私も社長就任の挨拶では、「今回の私の人事は片道切符です」と、社員と共に本気で立て直す覚悟を告げた。