建機は、新興国の国づくりやインフラ整備には欠かせないものであり、一方で先進国の都市開発でも必要になる。とりわけ、日本が原型モデルを開発した“油圧ショベル”は、アジアを中心に新興国の開発で重宝されてきた。現在は、単なる“土を掘る機械”から“通信技術を駆使した情報機械”へと新たな付加価値を生み出しつつある。建機ビジネスの将来展望を探った。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 建設機械メーカー国内トップで世界2位のコマツの野路國夫社長の悩みは尽きない──。

 経済の長期低迷が続くなかでも、2012年3月期の連結営業利益は前年同期比26.5%増の2820億円を確保する見通しにある。にもかかわらず、社外の人から聞かれることは、“中国の失速懸念”の話題ばかりだからだ。

 11年に入ってから、世界の建機市場で約25%を占める最大の中国市場では、不動産バブルを鎮めるために実施された“金融引き締め策”により建設投資が低迷。その影響によって、中国の都市部で進行中だった新規開発案件が止まり、それまで倍々ゲームで伸びていた過熱状況に急ブレーキがかかった。

 その結果、コマツでは、5月以降の月間販売台数が7ヵ月連続で前年同月を下回り、“頭金ゼロ”で安値攻勢を仕掛ける中国の三一重工に中国市場トップの座を明け渡してしまった。

 一方で、国内2位で世界3位の日立建機も、コマツと同様に中国では月間販売台数を落としているが、同じ12年3月期の連結営業利益は前年同期比56.6%増の650億円と予想している。

 だが、コマツの野路社長にしてみれば、もとより「環境変化に左右されない会社にする」が持論であるだけに、昨今の大幅な円高にも屈せず、12年3月期第2四半期の営業利益率が13.1%と、経営努力によって08年秋のリーマン・ショック直前の利益率を上回った点にこそ着目してほしいところだろう。

 そして、世界最大の建機メーカーの米キャタピラー社は、中国の失速懸念に対しては強気の姿勢を崩さない。同社のスチュアート・L・レヴェニック・グループプレジデントは、「今回の金融引き締めのような出来事(景気の循環)は、過去にも経験している。中国政府の介入は、予期していたというだけではなく、効果的でポジティブだと考えており、12年に中国経済は回復する」と力を込める。

 国内の状況に目を転じれば、11年11月下旬に東日本大震災の復興策を盛り込んだ第3次補正予算が成立した。歳出総額は12兆1025億円で、補正予算としては過去2番目の規模となる。そのうち、復興関連の予算が9兆2438億円ということもあり、公共事業が動き出すことが期待されている。

 この動きを受け、政府系シンクタンクの建設経済研究所は、11年度の国内建設投資(全体)が前年度比8.5%増の44兆6400億円、12年度は同2.9%増の45兆9300億円になるという見通しを出した。10年度まで右肩下がりだったことを考えれば、“底を打った”と見ることができよう。